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「見積情報伝達シート」による調査ノウハウの伝達

ソフトウェア品質管理研究会 第6分科会「派生開発」(2012年)

問題の発生源が組織の役割分担の仕方に起因することが少なくない。しかもその分担方法が「前提」として認識されている場合は、そこに改善の手が入らない。この種の問題は、組織を跨ぐことがあるが、単に役割分担の問題だったりすることもある。
この報告書は、目立たない取り組みだが、問題を分析する過程で、問題の源泉が不適切な慣行にあることに気付いたケースであり、問題を分析することの重要性を示唆している。

概要:

小規模かつ短納期の派生開発が多い組織では,製品知識や経験を持った熟練者が開発案件を短期間に精度良く見積もり,経験の浅い若手技術者が中心になって開発を行っているところが多い.こういった組織では,開発案件の増加に伴い,熟練者がより見積もりに特化することで開発に関与する機会が減少し,見積側と開発側のコミュニケーションの希薄化を引き起こしている.特に,熟練者が見積もった際の調査内容が開発者に十分に伝達されないことによって,変更の影響箇所の特定ミスに起因する変更漏れを招いている.
そこで我々は,熟練者が見積もった際の調査内容を効果的に伝達させ,変更漏れ等の不具合を防止することを目的として,見積側と開発側をつなぐ「見積情報伝達シート」を考案した.これを実際のプロジェクトに適用した結果,変更漏れに起因する不具合を減少させることに成功した.なお,このシートによって,熟練者の調査ノウハウが若手開発者に伝承されるといった人材育成上の効果も得ることができた.
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