企画セッショ

人材育成、技術伝承におけるデジタル技術の活用

人口構造の変化により様々な問題が発生すると懸念されている「2025年問題」が目前に迫ってきました。その中でも労働力人口の減少はあらゆる産業に大きな影響を与えると考えられています。

各企業は生産性を維持するために、機械による自動化の推進とともに、新入社員の効率的な教育、あるいは熟練者の技術・技能やノウハウを次世代に効率的に継承することが急務となっています。そのような場面でICTを活用して効率的に人材育成や技術伝承をおこなう仕組みづくりが注目されています。一方で、デジタル社会、特にAIの発展と浸透によりHow toのみを効率よく学ぶ習慣が定着し、若手技術者の考える力が弱くなった、対応能力が低下しているといった、デジタル化の弊害も指摘されるようになってきました。

本シンポジウムではこのような人材育成・技術伝承の現場でのデジタル技術の活用について企画セッションを開催し、すでに取り組まれている企業の技術者や、人材育成・技術伝承の推進支援をされている方を講師にお呼びし、人材育成、技術伝承の分野のこれからの方向性、注意すべき事項などを皆様と共に考えたいと存じます。

パネラーとして3名の講師をお呼びいたしました。各々の講演もさることながら、講演終了後はパネルディスカッションを予定いたしておりますので、皆様も参加して活発な議論を期待いたしております。

講演1

デジタル技術を用いた技術・技能伝承

-暗黙知化した属人作業の伝え方!-

野中 帝二 氏
トリニティ プログラム 代表

ききどころ


野中 帝二 氏

日本における人材育成投資は欧米に比べて低く個人任せになっており、属人化を生み様々な問題が発生しています。また少子高齢社会で生産年齢人口が減少する中、分業化や多角化・デジタル化が進みゼネラリスト的な人材が求められるようになっています。このような環境下で技術・技能伝承を進めていくには、標準化やデジタル化が益々必須となりますが、そこには3つのリスクも潜んでおり、これらに対応しつつ標準化やデジタル化を進めていく必要があります。そこで本講演では、暗黙知化している属人作業の見える化を行い、デジタル技術を活用した伝承の考え方・進め方と伝承事例をご紹介いたします。

登壇者紹介

日本電気㈱へ入社(電子機器の生産技術を担当)後、㈱NEC総研、㈱富士通総研にて合計40年、大手から中堅中小企業の製造業を中心とした企業に対しIT企画・業務改善・ものづくり革新、技術・技能伝承などのコンサルティングを実施。
2016年より個人事業(コンサルタント)を起業し、技術・技能伝承やものづくり革新などのテーマで活動している。

研究論文や著書(代表的なもの)


  • 技術・技能伝承への取り組み.富士通総研,Vol.01,p138-143,2008Nov
  • 成功する技術・技能伝承の進め方.日刊工業新聞社,Vol,25,No.14,p10-23,2012.
  • 組織における知の継承-知の継承における五つの誤解.特技懇(特許庁),Jan,No.268,P34-42,2013
  • モノ創りのための技術・技能伝承-コア技術・技能の見極めと強化に向けて.富士通総研,Vol.05,p42-48,2013
  • 失敗しない技術・技能伝承メソッド.日刊工業新聞社,Vol,64,No.4,P13-54,2018.
講演2

マツダの金型製作部門における技能伝承の取り組み

久保 祐貴 氏
マツダ株式会社 技術本部 ツーリング製作部 ツーリング技術グループ アシスタントマネージャー

ききどころ


久保 祐貴 氏

マツダは、お客様へ人生の輝きを提供するクルマ造りを目指している。提供価値の1つである「魂動デザイン」を高い精度で量産車にて実現することが生産技術の使命である。そこで、生産技術領域では、技能による造り込み(希少性・感動)と生産性の高さ(高速・高精度)を高次元で両立させるMass Craftsmanship(職人技の量産化)に取組んでいる。金型製作部門でも、製作プロセスの随所に存在する高度な技能を高効率に受継ぐ必要がある。本報告では、金型製作部門の新たな技能伝承の取組みであるデジタル動作解析による匠開発システムについて紹介する。

登壇者紹介

2005年マツダ㈱入社
現在、技術本部 ツーリング製作部 ツーリング技術グループ アシスタントマネージャ―

パネル討論

3者によるパネル討論

パネリスト

野中 帝二 氏
トリニティ プログラム 代表
久保 祐貴 氏
マツダ株式会社 技術本部 ツーリング製作部
ツーリング技術グループ アシスタントマネージャー
土井下 健治 氏
コマツ 開発本部 デジタルイノベーションセンタ
デジタル第一開発グループ チーム マネジャ

登壇者紹介

土井下 健治 氏
1991年~2007年 コマツの外販エレクトロニクス製品のソフト設計から企画、営業までを経験
2008年~2013年 鉱山機械向けテレマティクスシステムKOMTRAX Plusのモデルチェンジ企画・開発・導入推進を担当
2014年~現在 機械のビックデータを解析し、ソリューションを提案するコトビジネスの企画・開発に従事

研究論文や著書(代表的なもの)


  1. 土井下健治:「無人消防用ロボットの開発」,『建設機械』 537.vol.45 No.11, pp.6-9, 日本工業出版, 2009/11
  2. 土井下健治、村本英一、神田俊彦:「建設機械へのICT応用」,『コマツ技報』 vol.56 No.163-02, pp.2-6, コマツ, 2010
  3. 土井下健治:「建設機械におけるICTシステムの活用」,『建設の施工企画』  No.731, pp.22-27, 日本建設機械化協会, 2011/1
  4. 土井下健治、村本英一、神田俊彦:「建設機械における情報化施工システムの活用」,『建設の施工企画』  No.740, pp.33-37, 日本建設機械化協会, 2011/10
  5. 土井下健治:「建設機械におけるICTシステム活用と課題」,『建設機械』 562.vol.47 No.12, pp.50-56, 日本工業出版, 2011/12
  6. 土井下健治、村本英一、神田俊彦:「建設機械におけるICTの活用」,『配管技術研究協会誌』  vol.52 No.1, pp.54-60, 配管技術研究協会, 2012/1

コーディネーター

弓削 哲史 氏
防衛大学校 電気情報学群 電気電子工学科 教授

登壇者紹介

弓削 哲史 氏
1991年防衛大学校助教
2003年同助教授
2014年同教授
その間、信頼性工学、特に確率モデルを用いてシステムを数理的に記述し、システムの信頼性や保全性を評価する研究に従事。

研究論文や著書(代表的なもの)


査読付き論文50本以上、国際会議発表50件以上、国内会議発表100本以上

その他


学会活動:
日本信頼性学会理事
電子情報通信学会信頼性研究会委員長
IEEE Reliability Society Japan Chapter, Chair