研究報文・事例報告

Session1

信頼性試験

1-1

事例で示す計量抜取信頼性試験の有効性

松岡 敏成 氏
三菱電機モビリティ株式会社
規格試験の多くは計数抜取信頼性試験で規定されているが、実使用において許容可能な小さな不信頼度の耐用寿命を検証するには、限られた試料数では実現困難な試験時間を要することが多くなっている。この問題を解消するには、計量抜取信頼性試験の導入が必要である。限られた試料の標本データからは故障判定されるものはないが、採取された測定データから劣化の兆候となるデータの変動をとらえて、目標とする寿命を満足できるか否かを判断する。
実際に試験を行った結果から,どのように寿命を見極めたかという事例を示す。
1-2

ポゴピンの短寿命化の事例紹介

鬼丸 浩司 氏
ユーロフィンFQL株式会社
ポゴピンの内部に発生した腐食(脱亜鉛腐食)要因により、接触不良に至った市場障害にフォーカスして、短寿命となりうる要因を導いた事例について発表します。また、FTAで抽出した4つの着目点(腐食性物質、温度/湿度、傷(摺動)、ピンホール)で新たなサンプルに対して検証を行った結果、ギ酸イオンと硫酸イオンが添加された状態且つ傷(摺動)が有るパターンの方がより腐食が促進されました。検証結果から得られた接触不良メカニズムを推定します。
1-3

HALT試験事例紹介(加熱ヒーター故障解析)

福田 貴之 氏
エスペック株式会社
HALT (Highly Accelerated Limit Test)は、厳しいストレスを与えて短時間で製品の潜在的な弱点を検出する定性的な加速試験であり、設計段階での脆弱性抽出や既存製品とのベンチマーク、不具合再現試験などに用いられる。しかしながら公開されているHALT試験事例は多くなく、HALTガイドラインも具体例は乏しいため、新しくHALT試験装置を使用するユーザーが試験条件や試験環境、解析方針などを決定していくことは容易ではない。
そこで昨年の第53回 信頼性・保全性・安全性シンポジウムでは、当社の環境試験器用制御ユニットでHALTを行った手順と結果を紹介した。今回はHALTを使用して行った故障解析の事例を紹介する。
Session2

故障解析

2-1

THz-TDRの波形差分を用いた高密度パッケージの故障解析手法

前原 泰秀 氏
ルネサスエレクトロニクス株式会社
我々は2023年の第52回シンポジウムにて、テラヘルツ技術を応用したTime Domain Reflectometry法(以下TDR)を適用することにより、極めて高い精度に断線位置を推定できることを示した。一方で、TDRの原理に不慣れなデバイス設計者などからは、TDR波形を正しく解釈できていない場合も多々あり、表現上の工夫が必要と考えた。そこで単純に良品波形と不良品波形の差分をプロットしたところ、結果を理解しやすくなっただけでなく、位置特定精度がさらに向上することがわかった。例えば図4-図6の解析事例では、真の不良個所は良品と不良品の波形の差が生じ始める場所ではなく、差分がピークになる位置に存在していた。これらについて、幾つかの実例を紹介する。また従来はTDR法が使いにくいと考えられていたショート不良や高抵抗不良へのTDR法の適用事例を紹介する。
2-2

CAEとL18実験を用いた MLCCの電歪による基板の変形解析

斎藤 彰 氏
テック・サイトウ
MLCCに電圧印加すると、積層方向に伸び、積層に垂直方向に縮む電歪が発生する。この鳴きへの影響を調べるため、MLCCの内部電極、外部電極、基板のランド、はんだのフィレットなど8条件をL18実験に当てはめ、CAEの応力解析で基板の変位量で評価した。これにより、各因子の影響度合いが分かり、今後の設計に生かせることが分かった。
Session3

異常検知と予測

3-1

異常検知モデルの劣化予測手法の開発

福島 航 氏
株式会社IHI
過去の稼働データを学習データとして用いる機械設備の異常診断モデルでは,動作環境の変化などによりモデルの精度劣化が起きる場合がある。本稿では,異常診断モデルの精度劣化を予測する手法の開発について紹介する。異常診断モデルが精度劣化する時期を予測することで,学習データの更新頻度を適正化し,モデルの精度を効率的に維持することが可能になる。
3-2

機械学習を用いた、ECUソフト検査の判定自動化

久保 結人 氏
トヨタ自動車株式会社
今回の発表では、ECUソフト検査における自動判定システムの構築と評価を行いました。機械学習の最新技術であるMTAD-GATを採用し、時系列およびチャンネル相関記憶の改善により高い精度を達成しました。さらに、ROC曲線を用いた閾値決定法の有効性も示し、異常検知の標準的な手法を提案します。これにより、ECU検査以外の分野への本システムの応用も期待されます。
3-3

機械学習を用いたボルト締結の軸力/トルク関係の把握

花井 洋志 氏
日産自動車株式会社
近年、AWS SageMakerを始めとした機械学習ツール環境が整備されてきたことを受けて、より効率的な開発ツールを策定することを目的とし、過去の開発実験結果とこれに関わる影響因子パラメータからデータベースを構築し、機械学習を活用する。影響因子が多くかつ結果のバラつきが大きいボルト締結課題を試行対象とした点、開発ツールの汎用化を目的としてGUI化を取り組んだ点が要点となります。
Session4

リスクマネジメント

4-1

リスクアセスメント技法(R-Map、HHA等)を活用した
リスクマネジメント

今中 俊行 氏
ダイキン工業株式会社
地球温暖化対策のひとつである自然冷媒化が進む中『安全性にリスクのある冷媒を社会全体でどう安全に利用するのか』という課題に対して、社内のリスクアセスメントプロセスと体制を確立したことに加え、業界の競合メーカー、異業種企業との積極交流、各種事業者、安全の専門家、行政等、多くのステークホルダーを巻き込んだ社会全体で取り組む活動へ拡げることが出来たのは、安全性を検討する際の共通言語であるリスクアセスメント技法を活用したマネジメントの成功事例であり、今後、日本が国際的な牽引役になるリーダーシップをを示せた部分。
4-2

飛行中の突然の揺れによる負傷リスク低減対策について

中村 壮一 氏
全日本空輸株式会社
飛行中の突然の揺れによる航空事故の撲滅は世界中のエアラインにとって長年の課題であり、事故防止のために様々な努力が続けられています。ANAグループではボウタイ・モデルをベースとしたリスクマネジメント手法により、「揺らさない」「揺れに備える」「怪我をさせない」ための対策に部門横断的に取り組んでいます。この手法は、航空業界に関わらずあらゆるリスクマネジメントに活用できると考えます。
Session5

信頼性評価手法の改善

5-1

有限要素法解析と冷熱サイクル試験による
QFNはんだ接合部の耐熱疲労性改善

中道 徳馬 氏
株式会社安川電機
製品の小型化のためにQFN (Quad Flat Non-leaded package) のカスタムICを採用する場合,汎用ICのQFNとは構造が異なることが多いため,開発工程上流でQFNを単独で実装した基板ではんだ接合部の信頼性を試験します。しかし,これに合格しても,開発工程下流での他の部品が高密度に実装された基板で試験するとNGになることがあり,その場合,迅速な改善が求められます。この事例として,有限要素法解析と冷熱サイクル試験を組み合わせてはんだ接合部の耐熱疲労性を改善した結果を報告します。
5-2

腐食分極曲線の測定ばらつきの改善

石田 雄二 氏
西日本工業大学
腐食分極曲線のばらつきを改善するために、測定試料の形状を設計変更した。設計前後の試料を使用して、分極曲線を測定して、腐食電位、腐食電流密度の平均と標準偏差の変化を検定を使用して検討した。
Session6

パワーデバイス

6-1

パワーデバイスのウェハプロセスにおける欠陥密度分布の統計解析

馬場正太郎 氏
富士電機株式会社
パワー半導体のウェハプロセスでは、工程改善による欠陥低減が市場信頼性の確保のために重要となる。インラインQCでパーティクル数や欠陥密度を管理しているが、どのような分布形状に従うかは一般に知られていない。今回、多くの工程でパーティクル数や欠陥密度が対数正規分布に従うことを見出した。SPCやCpkなどの工程管理手法は正規分布前提の理論体系であるが、今回の知見を応用して従来の工程管理手法を拡張することや、直線化による拠点間の不良実力比較などに応用した事例を実データをもとに報告する。
6-2

SiC MOSFETのAC-BTI試験国際規格差異と留意点の検証

武井 康平 氏
沖エンジニアリング株式会社
SiC MOSFETには、スイッチングに伴うACストレスにより、しきい値電圧が変動するという従来のSiデバイスには見られない固有の劣化モード(AC-BTI)があります。AC-BTIに関する規格は各国から提案されていますが、各規格で試験条件の記載が異なります。今回は、各規格に記載されている試験条件がAC-BTI試験によるしきい値電圧の変動量に与える影響について、市販デバイスを評価して確認を行いました。
Session7

標準化と安全性

7-1

日本産業界における安全技術向上を目指した
SRP/CSの非常停止装置とインターロック設計方法の考察

平木 俊也 氏
新潟県立柏崎工業高等学校
欧州における適合性評価制度やCEマーキング制度の成功事例を踏まえ、日本でも機械メーカや設計者が自ら責任を持ち、対象とする機械に適合宣言を行う仕組みの構築が理想であると考える。しかし、法規制とISO/IEC規格の整合化が進まない現状に加え、文化的背景や社会的因習の違い、設計工程の複雑化、安全関連部(SRP/CS)設計技術の習得、コスト増加などが課題となっている。本発表では、これらの課題を踏まえ、SRP/CSにおける非常停止装置とインターロックの具体的な構築方法に焦点を当てて解説する。これにより、日本産業界における安全技術の普及促進と労働災害削減への貢献を目指す。
7-2

航空機電動化に対するIHIの取り組み

小林 敏和 氏
株式会社IHI
ハイブリッドや電動推進といった航空機への電動化適用を目指した研究が進められており、従来航空機と同レベルの安全性・信頼性を有する必要がある。一方で、従来とは異なる技術課題や使用環境が想定されるため、設計や検証に用いる標準規格が存在せず、安全性の証明に各社時間を要している。本発表では、IHIで進めている電動化研究と課題に対する取り組みについて報告する。
Session8

事故報告の活用

8-1

2タイプの医療事故データベースを活用した
インシデント・アクシデント報告書作成支援システムの構築

坂東 幸一 氏
電気通信大学
本システムは類似事例の抽出対象を先行研究で行った日本医療機能評価機構の医療事故DBから作られたDBの他に自病院DBも対象可能にし、自病院の過去事例を今後の改善に役立てることができるようにした。更にこれら二つのDBを併用することにより、報告書作成中の事例が自病院特有の事例か他病院でも起きている事例か、自病院における再発か新規か等の改善策検討の方向性判断に繋がる情報が得られ、適切な改善策の検討に役立つ。
8-2

機械故障による船舶事故調査報告書の原因と対策との対比
:共起ネットワーク分析を用いて

菊地 和満 氏
独立行政法人海技教育機構
研究目的は、運輸安全委員会による事故調査報告書から、船員の安全性を確保するための教育・訓練に役に立つ資料を得ることです。ヒューマンファクターの観点から、運輸安全委員会による調査が行われ,事故の原因究明と再発防止策が提案されています。
本研究では、テキストマイニングの手法を用いて分析した結果を報告しています。
訓練不足は、事故原因とされていないにも関わらず、対策には多くの教育・訓練が必要であることが示唆されました。
Session9

異常検知システム

9-1

自動組立ラインの予兆システム導入

山崎 要 氏
株式会社アイシン
電動商品ラインの故障ゼロ化の方針をうけ、搬送部の故障を未然に予防できる対策が必要であった。対象ラインはハイブリッドダンパーのラインであり、データを加速、減速、低速で層別し解析しマスターとの差に閾値を設定し予兆システム作成に繋げた事例です。
9-2

工作機械の加工モニタリングによる信頼性・保全性の向上

島田 侑里 氏
コマツNTC株式会社
サーボモーター情報を主としたモニタリングシステムの事例紹介をする。量産現場において重要視される高生産性は、設備側にも信頼性・保全性が要求される。本事例では切削加工や設備劣化といった状態が変化する要素を、データの活用により監視・異常検知するシステムを提供することで、設備メーカーとしてトータルのレベルアップに取り組んでいる。
Session10

未然防止と保全性評価

10-1

トラブル未然防止への行動変容に向けて

鈴木 和幸 氏
電気通信大学
本研究は、トラブル未然防止に向けた組織の行動変容をテーマに、理性・感情・組織的推進の3要素を軸とした実践的アプローチを提案する。JALの「Safety Promotion Center」や「Truth」キャンペーン、Microsoftのユーザビリティテストなどの成功事例を分析し、感情に訴える仕組みが行動変容を促すことを示す。「他人事」を「自分事」に変え、しなやかマインドセットを育むことで、企業文化として未然防止の考えを根付かせる方法を議論する。
10-2

ブロック取り替え方策を用いた延長保証の有効性の検証

田村 信幸 氏
法政大学
ブロック取り替え方策を利用し、延長保証の契約を結ぶことが有効となる状況を修理の効果に着目して明らかにする。確率モデルを用いた数値解析により有効性を検証しているため、幾つかの仮定は必要ではあるが、定量的な判断基準を示すことができる。