第53回(2024年度)信頼性・保全性・安全性シンポジウム

優秀報(事例奨励報(発表学術/技術貢献賞

受賞報文・事例決定

2024年7月18日(木)~19日(金)に開催された「第53回信頼性・保全性・安全性シンポジウム」における各賞の受賞者が決まりました。

参加者からの投票結果をもとに、本シンポジウム報文小委員会による厳選なる審査と組織委員会の最終審議を経て2024年9月25日(水)、今年度は「優秀報文賞(1件)」「優秀事例賞(1件)」「奨励報文賞(1件)」「奨励発表賞(1件)」を授与することを決定いたしました。学術/技術貢献賞は該当者なし。

(発表番号、所属は発表時のものです。Session番号順、敬称略、○は発表者)

1.受賞者

※発表番号、所属は発表時のものです。Session番号順、敬称略、○は発表者。

優秀報文賞Excellent Paper Award

Session2-3
報 文 名: Bayesian Active Learningを用いたリジッドアクスルサスペンションのセットベース設計法
著  者: 白石 英樹
所  属: トヨタ自動車株式会社

受賞理由

本報文は、開発もしくは構想設計段階において、ユニット・モジュールが、複数の性能目標を満足する諸元の成立範囲を明らかにするセットベース設計に関する取り組みでした。本設計法を適用すると複数性能を同時検討でき、条件変更や追加による手戻りリスクを低減できます。本報文では、リジッドアクスルサスペンション設計への適用が報告され、機械学習の1つであるBayesian Active Learningにより逐次的に実行可能領域が探索できます。本格的なDX時代到来の具体的イメージを感じさせる報告であることに加え、報告内容は様々な技術や手法を多面的に応用した複雑であるにも関わらず、ビジュアル化により聴衆にとって非常に判り易いプレゼンでした。以上により優秀報文に値すると判断いたしました。

優秀事例賞Best Application Award

Session7-2
発表事例: 市場環境下の車載電子部品のはんだ熱疲労予測法の適正化
著  者: ○西森 久雄、武藤 潤、古川 智之
所  属: トヨタ自動車株式会社

受賞理由

製品開発における信頼性の向上には市場環境ストレスに対する試験の適正化や劣化評価および寿命予測は極めて重要になります。本発表は、市場環境下における故障発生前のはんだ接合部の熱疲労損傷度合いを電子線後方散乱回折と結晶方位解析(GROD:Grain Reference Orientation Deviation)により定量化し、温度パラメータの中で推定が難しい車内温度を気象データから日射量に換算して算出することで、市場での熱ストレスと冷熱サイクル試験を適正化した報告でした。既に社内運用の実績があること、電子機器の開発者にとってはんだ接合部の熱疲労評価方法は利用価値が高いことから、本報告の実用性は高く評価されます。以上から、本発表は優秀事例賞に値するものと判断いたしました。

奨励報文賞Incentive Paper Award

Session5-2
報 文 名: 有限要素法解析を用いた電子機器の耐振性評価手法
著  者: ○中道 徳馬、竹中 国浩
所  属: 株式会社安川電機

受賞理由

小型化が求められる電子機器において様々な振動や衝撃負荷が想定される中、設計段階で簡便に評価が可能となる有限要素法解析を用いた耐振性評価手法に関する報告でした。基板上の部品を、計算コストを上げずに網羅的に評価でき、故障危険部品、故障注意部品、安全部品の3つに判定できる内容であり、非常に分かり易くまとめられて、理解しやすい研究報文でした。
故障した部品は発表者自らが解析を行っており、はんだボール等の断面出しは素晴らしく、技術力の高さを感じました。今後、更に精度向上を進めることが期待できること、今回ご報告頂いた正弦波振動入力とは異なる衝撃やランダム周波数振動などの様々な入力の評価に発展が期待できることから、奨励報文賞に値すると判断いたしました。

奨励発表賞Incentive Application Award

Session3-1
発表事例: ツース脱落/転石検知支援システムによるお客さまの現場の生産性・安全性向上
著  者: 江本 遼平
所  属: 株式会社小松製作所

受賞理由

本発表は、油圧ショベルなどの建設機械や鉱山機械の生産性低下、それに伴い大きな損失が生じる原因となるツースと呼ばれる部品の脱落とタイヤ周辺に転がっている石(転石)を検知するシステムの紹介でした。このシステムはAIを使用してツース脱落や転石の有無を検知する仕組みであり、現場での知識を生かして適切なカメラの設置位置を決定し、さらに顧客が使用する様々な状況を想定して検知精度を評価しています。最近では効率を重視して机上での議論が主体となることも少なくありませんが、本発表は問題解決の基本である三現主義が如何に重要かを改めて教えてくれる内容であり、奨励発表賞に値すると判断しました。

2.本表彰制度の目的と選考方法

本シンポジウムは、企業の第一線で活躍されている研究者や技術者の方々が現実的に重要な信頼性、保全性さらにヒューマンエラー防止など安全性にかかわる問題を解決していくための知見を共有する場であり、発表者と参加者との討論により問題点を整理し、得られた知見をより体系化して知識の共有化を図ることを目的としています。

その目的を達成する1つとして、優秀な報文・事例を表彰する制度を設けています。そのねらいは、研究発表者のインセンティブを喚起するとともに、一般参加者には推薦を通して本シンポジウムへ積極的に参画していただくことです。

このような背景から、参加者全ての方々に幅広く優秀報文・事例の推薦をお願いし、これに基づいて選考を行っています。本年も、参加者の皆様の多様な視点から投票をいただきました。
一般発表(研究報文/事例報告)26件について参加者からの投票結果をもとに、本シンポジウム報文小委員会(委員長:弓削哲史氏(防衛大学校 電気情報学群 電気電子工学科 教授))による厳選なる審査と組織委員会(委員長:田中健次氏(電気通信大学 産学官連携センター 特任教授))の最終審議を経て、上記に示す各賞受賞を決定いたしました。

3.賞の種類と紹介

(1)優秀報文(事例)賞
優秀報文(事例)賞は、理論・方法などに従来試みられなかった新しい知見を有する内容、あるいは信頼性業務の遂行上裨益をもたらす内容を有する、優れた発表に与えられるものです。今年度は上記に示す「優秀報文賞」と「優秀事例賞」をそれぞれ1件選考いたしました。

(2)奨励報文(発表)賞
奨励報文(発表)賞は、一般投票では選出されにくい専門分野や理論的な研究について、今後の信頼性・保全性・安全性の研究や発展を期待できる内容を有する発表に与えられるものです。今年度は上記に示す「奨励報文賞」と「奨励発表賞」をそれぞれ1件選考いたしました。

(3)学術/技術貢献賞
学術/技術貢献賞は、発表の内容が学術的また労力的見地から見て表彰に値すると判断されるもの、あるいは、啓蒙的であって参加者にとって大いに有益と判断された発表に与えられるものです。今年度は「技術貢献賞」「学術貢献賞」ともに該当がありませんでした。