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クオリティフォーラム2022 過去の実績

経営戦略としての働き方改革
~これからのキーワード「ワーク・エンゲージメント」~

株式会社ワーク・ライフバランス 取締役・パートナーコンサルタント
大塚 万紀子氏に聞く

聞き手:安隨 正巳(日本科学技術連盟 品質経営創造センター 部長)
※記事まとめ 中村 紗依(日本科学技術連盟 品質経営創造センター)
大塚 万紀子 氏

大塚 万紀子 氏

株式会社ワーク・ライフバランス
取締役/創業メンバー/
パートナーコンサルタント

楽天を経て、06年(株)ワーク・ライフバランスを小室淑恵氏とともに創業。高いコーチングスキルを活かし売上利益に貢献する働き方改革コンサルティングの先駆者。心理学や組織論等をもとに多様性をイノベーションにつなげることが得意。経営者から”深層心理に寄り添いながらも背中を押してくれる伴走者”と厚い信頼を得る。これまでに農林水産省「食品産業戦略会議」委員(働き方改革分野担当)や神奈川県地方創生推進会議委員なども担当。二児の母。

1.楽天で学んだ、チャレンジングすることで得られるワクワク感

――まずは、大塚様はどういったご経歴をお持ちか、お教えいただけますでしょうか?
大塚:大学院在籍時、当時400人ほどの従業員数だった楽天にインターンシップ生として勤めていました。その後、就職活動で多くの企業面接も受けたのですが、楽天ではアイデアや意欲があれば男女かかわらず仕事の幅を広げるチャンスがあることを現場で見てきましたので、「ここでチャレンジしたい」と感じ、ご縁があって新卒として入社しました。
――現在のフィールドでのご活躍を考えると、IT企業・楽天に就職されたことは、やや意外な感じがします。
大塚:就職を考えるタイミングで自分の個性をかえりみたときに、「もしかしたら新しいビジネスを作る、新しい価値や考え方を広げていける仕事ができる業界の方が自分らしく伸び伸びできるのでは」との仮説があり、当時はまだ珍しかったEC事業を運営する楽天を選びました。入社すると、日々新たなチャレンジばかりで毎日ワクワクしていました。まさにエンゲージメントが高い状態、ですね!ふりかってみると、当時体験したワクワク感を自分で探すなかで、株式会社ワーク・ライフバランスという会社を立ち上げることに繋がったと思います。それは、変化をする世の中にいかに精神的な負荷なく、自分で変化を選びとり、ポジティブに変化を自分の手で起こしていくお手伝いがしたい、ということがベースになっています。

2.営業時代の大失敗談

――楽天時代、営業成績が目標の400%達成で表彰されたこともお聞きしました。
大塚:はい。達成できてとても嬉しかったのですが、実は失敗談も沢山あるのです。
――失敗談?
大塚:私の配属された部署では、楽天市場への新規出店のサポートをするのが仕事でした。営業成績は楽天市場に新たに参画いただいたお客様の数で決まるわけですが、3週目まで1件もご契約いただけていませんでした。
では、そんな最後尾にいた私に最期の1週間で何が起きたのか。私の力ではまったくなくて(笑)、見るに見かねた先輩が指導をしてくださったおかげなのです。もちろん、先輩からのアドバイスは全員に行われていたのですが、新卒で入った他のメンバーは素直に「先輩、教えてください!」と言えていたことに対し、私はインターンで入っていたこともあり「貴方は出来るでしょう」と思われ、自分自身も「出来るはずだ!」と根拠のない自信とプライドがあり、誰にも頼ることが出来ませんでした。全部を自己流でやっていたわけです。
そんな私に先輩がこう言いました。「大塚さんは、人の話を聴いていない。営業というのは基本的にお客様のお悩みをとことん聴くことが仕事なのに、あなたは一方的に話すだけの“押し売り”になっている。それではお客様との信頼関係など構築できるわけはないでしょ。アピールしたい、話したいという気持ちをぐっと抑えて、相手の話をしっかりと聞き切って、楽天市場をおすすめすることは一切話さないくらいの気持ちで、お客様の事業を教えていただくことを目標としなさい」と。
――それを実行されたのですね?
大塚:はい、もう、すぐ実行しました(笑)。そうしたら、面白いようにお客様が話してくださるようになりました。お話を聴けば聴くほど、お客様がたくさんの情報を私にくださり、その情報からサービスを提案し、お客様と一緒に何が有効かを考えて…というサイクルが回り始めたんです。結局、最後の1週間でご契約をいただけて、目標を達成することが出来ました。
――それは、すごいですね!魔法のようです。
大塚:本当に、先輩からのアドバイスは私にとって「魔法」そのものでした。でも苦い経験をしていなかったら、「ただ聞いておけばいいんでしょ」と誤解していたかもしれません。今も、「自分はできる」と思うことはなく、お客様に気持ちよくご自分のことをお話しいただけるように、「質問のトレーニング」を常にしています。こうした営業担当だったときの失敗談と先輩に助けていただいたりお客様と一緒に考えるチャンスをいただいたりした経験から、今は営業という仕事の面白さも伝えています。「いやだな」「うまくいかないな」と思う仕事ほど、別の視点を持つことで、その仕事の魅力を再確認できて、ワーク・エンゲージメントの向上につながることもあります。特に女子学生達の中で、営業は辛いからできれば就きたくないお仕事だと思う方も多いと思うのですが、聞き上手な方が多い女性には向いている職業だと思っていますので、営業職の魅力を知っていただきたいですね。

3.2006年にワーク・ライフバランス社を設立

――そして、2006年に株式会社ワーク・ライフバランスを設立されました。
大塚:楽天での毎日はすごく楽しくて(今も)大好きな会社なんですが、自分の年齢が上がるにつれて、私に育児や介護といったライフイベントが直面したときにも、この環境で働き続けられるのだろうか、という不安がよぎりました。でも、周りの友人にたずねても、どの会社でも働き続けるにはどうやらハードルがありそうだ、ワーク・エンゲージメントを高い状態で維持するには相当な工夫が必要だ、という状態だったんです。「社会を変えていかないと、大好きな楽天も社会の中で沈みかねないし、なんなら日本全体も沈んでしまう。もっと社会に貢献できるはず!」と漠然と気づき、かねてからよき相談相手であった小室淑恵さん(現 株式会社ワーク・ライフバランス代表取締役社長)に相談しました。そのとき、ワーク・ライフバランスという言葉を知りましたし、働き方を変えることが重要なのだ、という議論をしたんです。その日から、二人で、社会の問題を打破したい、ワーク・ライフバランスの本質を広めたい、ということを毎日のように対話し、創業の運びとなりました
――「ワーク・ライフバランス」についての問題意識は、以前からお持ちだったのでしょうか。
大塚:いいえ。全くそうではありませんでした。(笑)それまでの私は、「ワーク・ライフバランス」とはプライベートを充実させたい・働くことはほどほどでよいと考えるような人の「さぼり」を正当化する言葉だと思っていました。でも、小室との対話を通して「ワーク・ライフバランス」はライフで多様な経験や知識、人脈などをインプットし、それらを活かして仕事で新しい価値を作り出すための戦略の一つだ、と気づいたんです。決してぬるま湯で仕事をするのではなく、効率化を徹底することが「ワーク・ライフバランス」なのだ、と目からうろこが落ちたことを覚えています。

4.ワーク・エンゲージメントは「ワクワク」から始まる

――今年のクオリティフォーラムの講演テーマに「ワーク・エンゲージメント」というキーワードが入っていますが、先ほどの「ワクワク」の話に繋がってくるのでしょうか。
大塚:その通りです。エンゲージメントという視点で考えますと、自分のスタイルではないコミュニケーション法や自分には合っていない仕事は、どんな人でもやはり辛いですよね。自分の個性にあった仕事の方が当然のことながら成果は出ますし、伸び伸びと出来るため、本人も仕事に対して満足出来ます。働き方も含めて何が一番自分にフィットするのか、一人ひとりが考えないといけない時代になってきています。そうした思考を考えるための仕組みを組織として作っていく時代が来ているのではないでしょうか。
――エンゲージメントをどうマネジメントしていく、ということなのでしょうか。
大塚:コロナ渦がとても象徴的でしたけれど、一つの場所にみんなで集まって、一律に9時~17時で働くという形式では仕事がやりづらい、不安だ、という人がいる事実とどう向き合っていくか、経営者や部長クラスの皆さんのチームマネジメントの手腕が問われていると感じています。
――エンゲージメントを上げるためのポイントはあるのでしょうか。
一例ですが、部下のエンゲージメントを高める際に、上司が話す分量の方が多くなってしまい、結果として部下のエンゲージメントを下げていることがよくあるんですね。経営者にコーチングやメンタリングする仕事も担当するのですが、「社長はとても話上手なのですが、話していい時間は60分の内の10分だけです。残りの50分はいかに相手が気持ちよく話してくれるか、のスキルを社長は磨かないとだめですよ。」といった話もさせていただきます。指示や命令、鼓舞する話し方はすごくお上手なんですが、相手が聞いてほしいことを引っ張り出す質問が苦手な人が多くて、トレーニングのための壁打ち相手として私を活用いただくことが多いですね。

5.「ワーク・ライフバランス」の日本企業の現状

――ワーク・ライフバランスの日本企業の現状はどうお考えでしょうか?
大塚:創業した2006年頃は、世の中では残業の問題について誰一人関心をもっていなかったと思います(笑)。当時、当社への依頼で多かったのが「女性の産休・育休後どうやって復帰させればよいのか」というものであり、その当時から考えると相当進んできているといえると思います。
――その変化は、どのようにしてもたらされたのでしょうか
大塚:やはり法制度の整備は大きいきっかけでしたよね。企業の責任として、働き続けたいと思う人を取り巻く環境を整備することは“取り組まなければならないこと”だと言わざるを得ない環境が整ったように思います。
また、具体的な行動に移している経営者の割合が増えたことも変化を加速させていると思います。10人のうちたった1人が「我が社は、残業削減に取り組んでいます」とおっしゃっていても、残り9人が「関心ありません」となると、変化する不安感は大きくなります。今は10人中9人が「法律遵守をするのは当然」「変化しなくては」の方向に変わったため、今まで本当は積極的に変化したいと思っていた経営者が舵を切りやすくなっている雰囲気をすごく感じています。
――欧米と比較してみた場合、どうでしょうか
大塚:「欧」と「米」では、かなり違いがありますね。
アメリカは、移民国家ですから、次から次へと働き手が入ってくるので、労働力不足に困ることは少ないのです。働き方に関して言えば、優秀な人材に高い給料を支払い、たくさん働いてもらう。一般的な人材にはコストがかさむ残業や休日出勤はさせない、という戦略といえるでしょう。普通レベルの社員に2倍の給料を払う残業や休日出勤は経営悪化の根源になりますので、そんなことはさせません。このように、移民が入ってくるという労働力人口の構成だからこその給料体系や解雇の出来るようなルールを作って、人材の循環を促しているわけです。
ヨーロッパは、労働者保護と手厚い福祉がキーワードです。例えば、EUでは前日に仕事をした時間から11時間空けないと翌日仕事をしてはならないといった「勤務間インターバル」をすでに統一ルールとして批准しており、業界によっては例外規定もありますが、人の健康や睡眠時間を守ることを社会全体で取り組んでいます。
これらの国々に対して、日本は、移民が入ってくるわけでもなければ、労働の環境のルールがあるわけでもない。欧米に比べると「自国がおかれている背景に対する理解度」と「働くことに対するそれぞれの理想や直面している課題についての対話」が足りない、と私は考えています。
――では、これから重要になってくることは?
大塚:人口構造が変化している事実にすら10年前まで多くの人々が気づいていませんでした。今、少しずつこの点に関心を持つ経営者やマネジメント層が増えています。前提や環境が変化していくことに対する理解が、これからのマネジメント職には必須の項目になっていくでしょう。社会全体の変化と自社の人口構造の変化、例えば若手社員の比率、どのような価値観・好み・シチュエーションで能力発揮をするのか、といったことに気づき、個人やチーム単位でその個性を理解することがとても大切になっていくと思います。

6.「経営戦略としての働き方改革」のポイント

――一方で、「ワーク・ライフバランス」といえば、いまだに「ワークとライフどちらにかけるのか」、「残業の削減」、「女性の登用」等まだ部分的な理解をされている方も多いと思います。
大塚:「ワーク・ライフバランス」は、ライフで得られた多様な人脈や情報、経験が、ビジネスを生み出す際の付加価値となる、その循環や相乗効果だと当社は考えています。単に、仕事と私生活が両立できている状態に甘んじるのではなく、企業と個人双方にとってWin-Winな関係性を生み出すための土台ともいえるでしょうか。
その土台を作るために大切になるのは「コミュニケーション」だと考えています。
たとえば、効率性を上げるためのアイデアを持っていても、そのアイデアを発信する場=コミュニケーションする場がなければ、アイデアを出せずに“宝の持ち腐れ”になってしまいます。
別の例でいえば、ご自身のご両親の健康に不安があっても、そのことを上司に話せる機会や環境がなければ、なんとか自分で隠し通そうとしてしまい、最終的には突然の退職やメンタルヘルス疾患になってしまうこともあります。
困ったことがあったらすぐに相談できる、アイデアを思いついたらすぐに誰かに打ち明けられる、相談ができるといった環境を作っていくことが、効率性と生産性の向上につながるのではないかと考えています。
――最近、その重要性が叫ばれている「心理的安全性」にも繋がっていく部分があるのでしょうか?
おっしゃる通りです。一つ興味深い調査結果をご紹介します。Googleの「プロジェクトアリストテレス」という大規模調査です。このプロジェクトは、生産性の高いチームの共通項を探ることを目的としていたのです。心理的安全性は、もともと心理学や産業心理の業界ではずいぶん昔から言われていた言葉ではあるのですが、Googleの本調査によって注目が集まるようになりました。

Googleの当初の仮説は「有能なリーダーがいる・スキルの高いメンバーがそろっているなどが高生産性組織の共通項なのではないか」というものだったのですが、調査結果は「チームメンバーの発言回数が均等」「発言の影響力を理解しながら関わっている人たちが集まっている」という2点のみが共通項だったそうです。
――調査結果が「発言回数が均等」、「発言の影響力を理解する人たちが集まっている組織」は、少し意外な気がします。
大塚:私も最初は驚きました。とかく、スキルや経験を身に着けることがリーダーの条件だ!といわれて育ってきていますから(笑)。でも、リーダーがとびきり優秀であるよりも、メンバーが思っていることを気兼ねなく話せて、お互いの感情や背景に配慮できるチームの生産性が高かった、ということは、多くの人に勇気を与える結果でもあると思うんです。
リーダーが死ぬほど頑張って高いスキルや豊富な経験を集めることには限界があります。そこに頼るのではなく、リーダーをふくめたチーム全体が互いの「関わり」に着眼点を置いて、生産性向上をしていく、助け合いながら創意工夫していく。これは非常に日本企業の発展ストーリーにも重なるものがありますよね。そのためには、コーチングやメンタリング等のコミュニケーション技法が最近では重視されてきているのだと感じています。
――ホワイト企業に勤務している若手社員の離職が増えている、というニュースを目にすることもあります。
大塚:若者の定義も難しいところですが、世代によってとらえ方が異なる事実はありますね。彼らが決して心理的安全性だけで満足しているわけではありません。自分自身の能力や理想・チャレンジしたい方向性に対して、フィットする“ちょっと上の目標設定”があれば、それに向かって全力で走るという人もいます。その際に大切なことは、具体的でわかりやすい定量的な目標だけを重視するのではなく、「個性を見極め、その人に適切な目標設定であるかどうか」だとも思います。

また、私も含めて、バブルを経験していない世代ほど、「会社・日本社会が潰れたらどうしよう」といった不安を常に感じています。今の50・60代の方は定年まで勤め上げることが前提で働く人が大半かと思うのですが、40代以下は「会社はいつなくなるかわからない」という前提ですから、「この会社にずっといればいい」と思っている方が逆に危険とも言え、転職志向は仕方がないことだと思います。転職した先でその方と良好な関係性を築いていけることも一つのあり方かもしれません。「今所属している場所は様々であっても、一緒に切磋琢磨していく」ということに社会全体でチャレンジしていく必要性を感じています。

7.働き方改革の取り組みツールとしてのDX、ICTの活用

――働き方改革を効果的進めるためには、DX、ICTのツールの活用も必要です。
大塚:まさに「ツール」としての意識がとても重要です。経営者の方とお話をすると、「DX=ITツール」と認識をされている方がとても多いと感じています。そうではなくて、デジタルはもう少し概念的で、「物理的に見えるもの」以外にも可能性が広がっている世界を信じることができるか、ということかと思います。例えば、オンラインミーティングやslacks・teamsももちろんデジタルツールですが、これを導入したからDX化できました!というわけではないですよね。製造業等で作ったものが目に見える世界から、目に見えない価値という世界に繋げていくことが大切な視点なのではないかと感じています。

これまでお話ししてきたエンゲージメントというものも、見えない概念です。DXというアプローチで、エンゲージメントを可視化するなどの動きも今後進んでいくのだろうと思っています。デジタルツールは日進月歩でいろいろなものが進化して出てきていますよね。効率化を助けてくれるものも多いですから、その都度新しい物を取り入れることも大切だとは思うんです。ただ、企業によっては自分たちの事情にツールをカスタマイズさせることが多く、コストをかけたにもかかわらず、技術ダウンやレベルダウンしてしまうこともあります。自分たちにツールを合わせるのではなく、自分たちの働き方をツールに合わせて変えた方がよい、という視点もあわせて持っていただきたいですね。効率化が凄く上手な製造業の皆さんはこれまで培ってきたノウハウを元に最先端の技術にご自身の働き方を合わせてみてはいかがでしょうか。生産業は「シンプル」が大切だと聞きます。Too Muchなものに改善していくのではなく、そぎ落としていくということがこれからのDX・ICT・働き方においても製造業の皆さんのチャレンジなのかもしれないですね。
――昨年のクオリティフォーラムの講演でお話しされた「朝メール」や「変える会議」について簡単にご紹介ください。
大塚:朝メール・夜メールは「予定と実績をつけて、時間の軸を付けてその差を見ていく」ツールです。
達成できたか、できなかったか、は製造現場でご覧になることと同じで、立てた計画に対してのズレを見ないと、どこにミスがあるかはわからないですよね。
ただ、カレンダーなどでは社外の人との予定しか記載されていなかったり、時間の「帯」でしか見ることができません。一つ一つの仕事を見て、どこで予定と実績のズレが生まれたかを見ることが大切なので、専用のデジタルツールを作りました。もちろん、完全デジタルではなく、ホワイトボードなどを使って朝メール・夜メールをつけている現場もあります。

朝メール・夜メールによって見えたズレや課題に対して改善策を考えるべく話し合う場が「カエル(変える)会議」になります。
議論しやすいように、朝メール・夜メールのデータを円グラフなどで表示して業務の割合を把握したり、予定と実績のズレや業務遅れを把握するために棒グラフで見ることもあります。

朝メール・夜メールだけ行って「一人ひとりの気づきがあって良かったね」で終わる企業もありますが、それでは本質は変わりませんので、根本にある組織の仕組みの課題や風土の問題を取り扱うことが重要です。働き方改革で大切なのは、「毎日のくせを洗い出し、どう改善していくか、チームの中でそれをどう取り扱っているか」です。実はシンプルが一番難しいのですが…
「朝メール」イメージ
「朝メール」イメージ
「朝カエル(変える)会議」イメージ
「朝カエル(変える)会議」イメージ

8.マネージャーも従業員の皆さんも、一人ひとりが自分らしく働く環境について、お互いに会話が出来ることが働き方改革

――講演で特に聴講者に伝えたいメッセージがあればお話しください
大塚:最近の政府の発信を見ても、これからは「勤務間インターバル制度」の導入に対する議論が活発になっていくことが予想されます。社会全体で、企業として、取り組むことになるでしょう。
――「勤務間インターバル制度」とが必要な理由はなんでしょうか?
大塚:勤務間インターバル制度とは、前日退社した時間から一定時間あけてからでないと翌日の勤務を開始してはならない、というものです。インターバル(間隔)をあけることによって、人間としての営みが十分に行える時間を確保するわけです。特に注目されるのが睡眠時間ですね。睡眠時間の確保が出来ないと、パワハラやモラハラにつながるといった研究結果が出ているほどです。こうした観点からみると、働き方を整え、インターバルをとることは、従業員のワーク・エンゲージメントにも非常にかかわりが大きいといえます。マネジメントも従業員の皆さんも一人ひとりが自分らしく働く環境について、お互いに会話や相談出来ることが働き方改革なんですよ、というメッセージをお伝えしたいです。
――貴重なお話をありがとうございました。フォーラムでの講演が本当に楽しみです。