クオリティフォーラム2022

一般事例発表

A会場

新商品開発・技術開発、ホワイトカラーの生産性向上、その他

車載製品品質向上のための
不具合ナレッジデーターベースの構築と活用

森島 守人 氏
ヤマハ株式会社
近年、静寂なEVの普及や自動運転車の登場により車内エンターティメントのニーズが高まっている。弊社はこれに応えるため高品位なサウンドシステムの提供を開始した。ただ、車載領域での実績が浅く品質の対応が急務であった。そこで、従来の知見を含め、商品開発から工程設計・試作検証および市場の不具合情報を一元管理したナレッジデーターベースを構築した。FMEA形式を採用することで開発の初期段階からの活用が容易となり、単純な過去トラよりも形骸化が回避可能となった。また、個別最適ではなく部門横断で層別化しているので最少かつ有効な項目が抽出できた。この結果、各種レビューでの属人性も軽減され製品品質の向上に寄与できた。

AIによる画像解析・予測技術を利用した
大型ショッピングセンターにおける
空調制御最適化システムの開発と適用

橋本 達也 氏
株式会社 竹中工務店
近年AI による解析・予測技術の進歩が目覚ましい中、これまで大型施設の空調設備分野においてAIと積極的に連携する空調制御システムは生まれていなかった。これは施設管理者が独自の経験から最適と考える空調制御を選択して運用することが多く、建物の空調制御システムは成熟し新しい分野との連携が遅れており、AI利用の必要性が見いだせていなかったためである。
一方で、施設管理者の高齢化や人材不足から、その経験に頼らず、自動的に最適運用できる空調制御システムの開発が必要となってきていた。
そこで今回、大型ショッピングセンターにおいて、AI による画像解析・予測技術を利用し、施設と来客者の特性に最適な空調設定を可能とする空調制御システム(来客者の快適性を損なわない省エネルギー空調制御システム)を開発した。その目標達成のため、
「AI画像解析による来客者の快適性の把握とPMV空調の実施」
「AI画像解析とWiFi捕捉によるテナント専有部の外気風量削減」
「AI人数予測によるモール共用部の外気風量削減」
を技術的課題に掲げ、国内で初めて実現し、実プロジェクトに適用した。従来システムと比較し大幅な省エネルギーを実現した本システムを、今後も継続研究し、様々な建物に展開・普及していく。

切粉問題を統計的に解決!
コアムービング 加工切粉によるロス低減

伊藤 優汰 氏
澤藤電機株式会社
澤藤電機株式会社は、商用車向け電装品、汎用発電機、ポータブル冷蔵庫の開発から製造、販売までを行っているメーカーです。機械加工の永遠のテーマとして切粉問題があります。今回は、切削加工時に出る切粉が長くなることでワークに絡まり、加工機が頻繁に設備停止を繰り返す問題について取り組みました。従来の知識と経験に基づく方法では、なかなか解決できなかった問題を、応答曲面法で解析することにより特に影響を受けやすい面粗度や刃具寿命、加工時間についても同等以上の品質を維持したまま、切粉の長さを短くすることに成功しました。その概要を本稿にて紹介致します。

品質・技術力向上につなげる
上手な「機械学習」と「統計的品質管理」の使い方について

―時系列解析編―

渡邉 克彦 氏
トヨタ自動車株式会社
クオリティフォーラム2021では、ものづくりにおける品質確保や技術力向上につなげるための機械学習とSQC(統計的品質管理)のよりよい使い方について報告した。このとき扱ったデータは、ものづくりでよく見られる「正規分布に従う独立なデータ」が主な対象であった。近年、IoTの発展により設備状態や加工状況を示す系列的なデータ、いわゆる「時系列データ」(系列相関があるので各データが独立ではない)が容易に、大量に取得できるようになり、有益な活用が求められている。そこで今回、時系列データに対して傾向解析や将来予測などを行う際の機械学習とSQCのよりよい使い方について紹介する。

ユーザーと共に実現する、デジタル化による業務改善

-内製アプリ開発者ができること-

高橋 優一 氏
トヨタ自動車株式会社
現在の自動車業界は、「100年に1度の大変革」に突入していると言われている。
その中で弊社では、競争力の維持向上のため、「デジタル化」のさらなる加速が必要と考えている。
本発表では、「製造データ」を有効活用することによる、「受動的な業務」の効率化、および「能動的な新価値創出」を目指した取り組みを紹介する。
また、この取り組みを通して学んだ、ユーザーと共に「デジタル化」を実現するために、「ユーザーとシステム開発者それぞれに求める事」についても紹介する。
B-1会場

働き方、工程の品質改善・効率化

業務連関図を用いた、製造現場のデジタル化推進事例

-組長業務曼荼羅で業務支援アプリケーション開発-

熊谷 貴宏 氏
トヨタ自動車株式会社
【共同発表者】安藤 健 氏
当部署では、生産現場リーダーの業務負荷軽減を目指し、帳票のデジタル化を推進しており、ローコードP/Fをもちいて、業務支援システム構築を行っている。
根本的な業務負荷低減のためには業務改廃が不可欠であるが、実務者ですら全貌を完全に把握しきれていない業務を技術員である我々が業務改廃とシステム化を同時に行うことは困難を極めた。
そこで我々は、業務フローと情報の流れを一元的に表現・整理することで、業務同士の関係性と「真の業務の必要性」について検討することでこれを解決した。
本発表では、リーダーの業務支援システムの開発を通じて用いた、業務の整理手法とデジタル化の事例について報告する。

事務系職場へのデジタル化推進

~体験を通した自律的な改善風土の醸成~

渋谷 智美 氏
トヨタ自動車株式会社
当社では創業期よりお客様第一・品質第一で良品廉価なモノづくりを進めてきました。さらに仕事を改善していくためには、製造現場以外の職場でも生産性向上や付加価値のある働き方が求められています。
昨今、労使一体での社内デジタル化が加速していますが、いきなりデータ分析やAI活用に取り組むことは難しいのが実態です。まずは簡単なデジタルツールを事務系職場で使ってもらい、一人ひとりが日常業務で「使える、うれしい、もっとやりたい」という成功体験を通してデジタル化の一歩を踏み出すことで、自ら改善したくなる風土づくりに貢献した事例を紹介します。

日本品質奨励賞 受賞企業講演

TQM奨励賞
関工業株式会社

自動車用シートクッションパッドの配合処方最適化

橋本 健一 氏
東海興業株式会社
弊社はゴム、ウレタン、樹脂製品の設計・開発、製造から販売までを手掛けております。
弊社のウレタン事業部では、主に自動車用座席に使用するウレタンフォームを生産しております。
オープンモールド型で成形するウレタンフォームは、作業性を考慮し硬化反応が完了する前に金型から脱型するがその背反として、脱型後の製品の置き変形が散見される。
今回の報告は、L18直交配列表実験により作業性と品質を両立する処方を導いた事例となります。

CRシリンジ包装係における生産能力の向上

副題:CRシリンジ包装係の組織力及び改善力の強化を目指す

伊藤 梨玖 氏
株式会社ジーシーデンタルプロダクツ
弊社は、歯科医療機器メーカーである㈱ジーシーのグループ会社として1958年に設立され、世界の人々にへ「口腔を通しての健康」を提供する企業として、健康長寿社会に貢献する世界一の人工歯・高分子歯科工場の挑戦」をビジョンに掲げ活動を続けており、GQM(GCのTQM)導入(1981年)、デミング賞受賞(2003年)、日本品質管理賞受賞(2006年)への挑戦を通じて企業品質の向上と現場力の強化を図りました。弊社製品である歯科用コンポジットレジンの包装工程において、生産能力を超えるほどの多くのご注文をいただきました。本テーマでは、この状況に対し教育体制の見直し及び工程改善による生産性の強化を実践することで、未納低減を早期実現した改善事例を報告させていただきます。
B-2会場

SQCの活用

アルミダイカスト製品の内部欠陥低減

小池 史祥 氏
株式会社アーレスティ栃木
アルミダイカスト製品は、ダイカストマシンで溶湯を金型の中に高速・高圧で充填して作られます。その際に製品内部に残されたガスや凝固収縮で鋳巣が発生します。そして、鋳巣は内部欠陥ですので規格を超えると不良と判定されます。 本事例では、鋳巣を定量化して応答曲面法を用いて分析し、内部欠陥を低減する最適条件を導き出して生産性を改善した活動を紹介します。

日本品質奨励賞 受賞企業講演

品質革新賞
パナソニック オートモーティブシステムズ株式会社

自動車用シート 首元空調の快適条件明確化

門野 佑基 氏
トヨタ紡織株式会社
当社は、主力製品である自動車用シートの開発・生産を行っています。
今後、普及が予測される電気自動車は、航続距離課題に対して、効率的な空調電力の使用が求められており、人の一番近くで冷暖房できるシートヒータやシートベンチレーション等のシート空調への期待が高まっています。そこで、シート空調の快適性向上と効率化の両立を目指し、従来のシートとの接触部に加え、非接触部位への空調を検討しており、この部位の中で特に温冷感覚が鋭い、首元に着目しました。
今回は、SQC手法の実験計画法、重回帰分析を活用し、首元空調の快適条件(周囲温度、風速、風を当てる位置) の導出に取り組んだ事例を紹介します。

旧型補給バンパー 銀条不良撲滅

武藤 悠司 氏
トヨタ紡織株式会社
当社の岐阜工場は、旧モデルとなった自動車外装部品(バンパー)の金型をトヨタグループ各社から移管し、金型の改造、成形条件の調整を行い、生産しています。
しかし、一部のバンパーで成形不良の一つである“銀条不良”が発生しており、廃棄数の増加が生産性に影響を及ぼしていました。今回は、成形不良の発生するメカニズムを追究し、SQC手法を活用することにより、
定量的に最適な成形条件を導き出し、成形不良を撲滅することができた事例を紹介します。
※銀条不良とは:
材料が、ガス等を巻込んだ状態で金型内へ射出され、製品面に銀白の流れ模様が発生する成形不良
C会場

マネジメントと組織運営、QCサークル活動(小集団改善活動)の推進

日本一の効率性を1週間で達成した
ワクチン会場の爆速チーム作りに迫る

黒田 亮太 氏
株式会社総合医療コンサルタント黒田塾
【共同発表者】濵口 比呂光(はまぐちひろみつ)氏
医療者側が椅子で滑りながらワクチンを打つ。自動車の生産ラインを参考に設計された手法で通常の約13倍、日本一の効率性を達成した黒田塾の「高速大名行列方式」。細かい改善活動の連続はもちろん、成功の背景には細やかに設計された短期間での心理的安全性の構築、モチベーションを高める朝礼、リーダースタッフへの権限移譲や多能工化、チームの強みと顧客体験価値を最大化するサービスマネジメント精神、ES無くしてCS無しの精神を組織に浸透させた数々の施策があった。
今回は心理的安全性を定量化する方法を紹介します。参加者と組織メンバーの心理的安全性がどの程度かを体験していただくことで、翌日からの行動変容につながると思います。

海外グループ会社のQCサークル活性化

~QCサークル活動実態調査~

羽生田 真英 氏
株式会社アイシン
海外グループ会社でのQCサークル活動を活性化するには、どのような施策が必要なのか実態調査を行い、活動状況を把握することにより検討した事例である。
活性化に繋がると想定される様々な影響因子をパスで繋いで仮説モデルを構築し、そのモデルの妥当性を因果分析手法である構造方程式モデリング(SEM)により検証した。
また、QCサークルの立場ごと(事務局、世話人、推進者、リーダー)に行ったアンケートの自由コメント(言語データ)を関連性可視化の手法である、共起ネットワークを用いて分析し、施策の方向性を決定した。

全社のコンプライアンスを支えるアサーティブな職場づくり

森近 正彦 氏
株式会社アイシン
上位方針「各職場に入り込んだ職場風土改善の実施とインテグリティを本気で実践する職場風土作り」などを受け、当部は、あるべき姿を「アイシングループで働く一人一人が高い倫理観(誠実・正直・公正公平)を共有し、自然体でコンプライアンスを実践している」と考え、グループ唯一の法務専門機能として、コンプライアンスの定着、プロアクティブな法的サポートなどを重点として取り組んでいる。
しかしながら、近年、会計不正、品質偽装などの重大企業不祥事が社会問題化しており、その原因として「モノが言えない上意下達の職場風土」に由来している事例が多数報告されている。当社としても、放置するとこうした重大コンプライアンスリスクに繋がる「違和感」が多く存在していると考え、これらを早急に吸い上げ対応していくことが課題と考えた。
このため、まずは自部署において、マネジメントの下支えによる様々な取り組みにより、階層間格差をなくし、自分も相手も大切にして何でも忌憚なく話せるアサーティブなコミュニケーションにより、「違和感」を放置せず率直に意見を言える職場づくりの実現を考えた。
本事例は、この活動の結果、毎年実施する全社員の意識調査アンケートで、コミュニケーションのスコアを大きく向上させ、全社トップクラスの職場風土を実現させた取組みを紹介するものである。
C会場

特別セッション「ことばのデータ」

QCサークル活動(小集団改善活動)の推進

ことばのデータの活用方法

猿渡 直樹 氏
NSM コイルセンター㈱
安全品質本部副本部長
QCサークル千葉地区においては、2020年6月に㈱日科技連出版社様より、成書「仕事の改善に役立つ ことばのデータ活用法」を発刊し、QCサークル千葉地区のあらゆる活動において得られたことばのデータに関する知見を全国へご紹介することが出来ました。さらには、2021年に開催されました「クオリティフォーラム2021」におきまして、成書のメソッドをご紹介する機会をいただきましたが、時間的な制約もあり、十分なものとはなりませんでした。今回は、成書のメソッドの詳細と成書発刊後、これまでにさらに研究した内容を発表させていただくことで、全国の方々にことばのデータの有意性を認識していただき、活用していただくことで停滞した組織活動の活性化から個人レベルの質の向上を図り、日本全体の発展につながることを期待しております。「報連相ができていない」、「コミュニケーションがとれない」、「方針管理ができていない」など、組織の中でことばが活用されていないことでの弊害をお感じの方は是非お聴きいただきたいと思います。

「ことばのデータ」の活用例

上家 辰徳 氏
日本製鉄㈱
東日本製鉄所君津厚板工場 班長
「ことばのデータ」の活用例として小集団改善活動の実例でご紹介します。私たちのサークルは、年間の活動完結件数が3件/人と目標が決まっていました。しかし実態は、テーマが決まらない、会合が開けない、QC手法は完結報告書や発表大会のアクセサリー、完結報告書の提出は年度駆け込み型、全員参加ではなく個人活動など「自らの意志でやる」ではなく、「上司に言われるからやる」が正直な状態でした。このような形骸化されたサークルが、「ことばのデータ」をどのように活用して、サークルが活性化したのか。サークル運営で悩む、サークルリーダーやサークルメンバーは元より、支援者、推進者もご覧いただけますと幸いです。
D会場

人材育成、マネジメントと組織運営、
サービスの質向上、工程の品質改善・効率化

問題解決実践
やったつもり・できているつもりの問題解決を乗り越える指導

熊井 秀俊 氏
元 株式会社リコー
日本品質管理学会
問題解決について、組織においては上司もメンバーも研修を受けており、事実重視やプロセス指向など重要ポイントは「知っている」、そして組織の中で実践され成果報告もしているものの、芳しい結果もなく活気のある活動になっていない、このような上司もメンバーも「やったつもり・できているつもり」の問題解決になっている組織をよく見かける。
問題解決の習得は難しく、経験の浅いメンバーがなかなかできないことはよくある、それを指導するのが上司・指導者の役割であるが、「やったつもり・できているつもり」の状況の組織における問題は、この上司・指導者の不適切・不十分な指導にある。本稿ではここに焦点を当て、上司・指導者への実践指導を具体例も入れて論じる。

「DX銘柄」に見る成功法則

中山 秀夫 氏
日経BP 日経クロステック
日経コンピュータ副編集長/日経クロステック副編集長
国内でのDX(デジタル変革)の取り組みは、先行企業を中心として着実に進展しています。パイロットのプロジェクトで一定の成果を収め、全社展開のフェーズに入った企業はもはや珍しくありません。しかし先行企業でもDXを手探りで進めているのが実情です。目指す姿もアプローチの仕方も企業によって異なります。では企業はDXで何を目指しているのか、成功するにはどうすればよいか――。過去3年の「DX銘柄」受賞企業の事例などをひもとき、DXの動向とあるべき姿を探ります。

デジタル活用のソリューション品質管理

横江 明 氏
株式会社ブリヂストン
新事業・ソリューション品質システム課
当社は「最高の品質で社会に貢献」することを使命に掲げ、人々の移動や生活を高い品質のタイヤとゴム製品を通じて支えてきました。社会とモビリティのあり方が変化していく今、私たちの支え方もこれまでを超えて社会やお客様の困りごとを解決するソリューションを提供し、社会・顧客価値を共創するサステナブルなソリューションカンパニーへと進化していきます。本発表ではソリューションの一例としてリアル(現物現場)の世界をデジタルと組み合わせて実現したタイヤの交換時期予測の取組みと顧客価値を実現し続けるためにタイヤの使用環境やお客様の利用状況を組み入れて予測精度を維持する品質活動を紹介します。

車載ソフトの設計環境を変革する
デザインDX(設計DX)活動の紹介

小林 展英 氏
株式会社デンソークリエイト
【共同発表者】林 香織 氏、興津綾弓 氏
昨今続いている車載ソフトの大規模、複雑化に加えて、車載ソフト開発を黎明期から支えてきた熟練技術者が定年を迎える世代となっており、車載ソフト開発の当たり前が急速に失われることが懸念されている。この懸念に備えるためには、熟練者のノウハウや過去に発生した不具合情報を設計知見としてデジタル化し、当たり前品質の確認作業をデジタル技術で代行できるソフト設計環境へ変革することが期待される。本発表では、設計工程のDXを推進する手段として採用した、メタモデルという概念を導入した設計知見のデジタル化手法、およびデジタル化した設計知見を開発文書と照合して品質のダブルチェックを自動化する仕組みについて紹介する。

3者とフロアによる総合討論(パネル)

【コーディネーター】森﨑 修司 氏
名古屋大学
大学院情報学研究科