クオリティフォーラム 2021

一般事例発表

A会場

工程の品質改善・効率化、
QCサークル活動(小集団改善活動)の推進、人材育成

歯科用ボンディング材における工程生産性の向上

酒井 雄大 氏
株式会社ジーシーデンタルプロダクツ
弊社は、歯科医療メーカーである㈱ジーシーのグループ会社として1958年に設立されました。1981年に“GQM” (GC's Quality Management)と命名してTQMを導入し、デミング賞(2003年受賞)、日本品質管理賞(2006年受賞)への挑戦を通して企業品質の向上と現場力の強化を図りました。
ジーシーデンタルプロダクツは、21世紀を「健康世紀」と位置付け、世界の人々に「口腔を通しての健康」を提供するため “みんなで築こう健康世紀” をスローガンとして、弊社のビジョンである「健康長寿社会に貢献する世界一の人工歯・高分子歯科工場への挑戦」に向けた活動を続けております。
今回発表させていただきますボンディング製造係は、歯科の治療で使用される高分子材料を歯質に接着するため使用される接着剤を製造しております。
弊社では多目的光重合型 1 液性ボンディング材である G-プレミオボンドや今年新たに発売致しました、多目的光重合型 2 液性ボンディング材である G2-ボンドユニバーサルなど様々なボンディング材を製造しており、特徴としては、補綴物との長期的に安定した接着力の維持や塗布後すぐに高い接着力を得られる速乾性などが、先生方よりご好評いただき、 国内・海外での需要も高まり生産量も毎年増加しています。

弊社では生産性向上と製造体質強化を目的とし、工場革新活動(DPPI 活動)を推進しており、本テーマでは、工程内で発生する手直しのムダに着目し、メンバーの知恵を絞ってムダ作業の低減を実現した改善事例を報告させていただきます。

ことばのデータ(言語データ)についての研究成果

猿渡 直樹 氏
QCサークル千葉地区
【共同発表者】上家 辰徳 氏
昨年の6月27日に日科技連出版社さんより、QCサークル千葉地区編として「ことばのデータ活用法」という題名の本が出版されました。この本は、より多くの方々に「言語データ」を取り扱うQC手法での本来の機能を十分に引き出してもらうことを目的にして、手法の素材となる「言語データ」の取り扱い方について、QCサークル千葉地区で培ったノウハウを紹介したものであります。今回の発表は、この「ことばのデータ活用法」の本に書かれている内容の重要なポイントをいくつか解説して、コロナ禍で停滞しがちな活動の復活のきっかけとしていただくことと、みなさんに元気になって帰ってもらうことを目的としております。

問題解決実践
初心者・初学者が突き当たる壁を乗り越える指導

熊井 秀俊 氏
元 株式会社リコー
問題解決は、すでに考え方・進め方は確立されており、その要諦は煎じ詰めるところTQMの基本そのものであり、習得してしまえば、ごく当たり前に使える有用なものである。しかし、問題解決を学ぶ初心者初学者にとっては、その要諦はわかったつもりでも、いざ実践してみると的確に行うことがなかなか難しい。経験回数を積むことであるとき「なるほど、わかった」という「大きな理解ポイント」への進歩を遂げることが多いが、そこに至るまで長い時間悩み苦心する。この初心者初学者の壁となる苦心と悩みどころをとらえ、寄り添う指導を通じてどう指導して、「大きな理解ポイント」まで一日も早く進歩させるかを、これまでの実践指導を通じて論じる。

改善キーマンの育成と全社改善活動の活性化による
しぶとい改善風土の醸成

平松 直樹 氏
株式会社オティックス
当社における改善活動は、「スタッフ・職制改善活動」、「QCサークル活動」、「OT(オティックス)改善シート制度」を3本柱に現場における問題を解決してきた。また、改善の結果は、必ず標準化を図り、維持活動と技術蓄積につなげ、次の改善に展開できるようにしている。この3本柱が、各職場の方針管理、日常管理を支える原動力となっている。これらの改善活動をさらに強化するために改善活動強化の3要素を「問題(課題)意識」、「事実に基づく意識」、「標準化意識」と考え、その強化施策を打ち出し、しぶとい改善風土の醸成を図った事例である。

“人材育成”がQCサークル活動活性化の第一歩!

向井 浩 氏
理研ビタミン株式会社 大阪工場
B-1会場

新商品開発・技術開発、SQCの活用、機械学習・SQC

データサイエンスを活用した引け巣予測モデルの構築

~型内特性値の明確化~

森 正至 氏
株式会社デンソー
当社は一人ひとりに、ウェルビーイングな日常をご提供するため、先進的な自動車技術、システムの開発を進めています。中でも、自由に移動できるよろこびと環境保護の両立は自動車関連事業の最重要テーマであると捉え、車両の電動化や軽量化を達成することでその実現を目指しています。アルミニウムダイカスト領域では主力商品である耐圧気密製品群から薄肉筐体製品群へ「造るモノ」が変革することが予想され、CAEを活用した設計段階での形状造り込みと勘コツに頼らない良否判断基準の明確化が急務となっています。今回は鋳物の品質不良で大きな割合を占める引け巣をターゲットとして、SQC&DS手法を活用して効率的に課題解決した取り組み事例を報告致します。

CAEによる最適製造条件(OPCC)の追究

井上 孝治 氏、築城 佑果 氏
株式会社アーレスティ
良いダイカスト製品を生み出すために重要な金型設計の段階で、熱解析、凝固解析、湯流れ解析、応力解析などのCAEを活用し「設計で品質をつくり込む」ことを行っている。
本事例では、製品に発生している不良の因子を特定し、製造時に得られる実測データとCAEをもとに、最適製造条件を応答曲面解析などの統計的手法を用いて導出した。このOPCC活動で得られた結果について報告する。

日本品質奨励賞 受賞企業講演

品質革新賞
大和リース株式会社

品質・技術力向上につなげる
上手な「機械学習」と「統計的品質管理」の使い方について

渡邉 克彦 氏
トヨタ自動車株式会社
当社では約70年間、SQCを問題解決の有効なツールとして位置づけ、ものづくりにおける品質確保や技術力向上に活用してきた。近年、IoTの発展により 機械学習が注目され、SQCでは対応が困難であった問題の解決が可能となってきている。このように機械学習の登場で、さらなる問題解決力の向上が期待される一方で、両者は同じデータ分析手法でありながら生まれが違うなどの理由から、活用にあたっていくつかの課題が存在している。そのなかの1つに「SQCの多変量解析法と機械学習との役割分担」があり、使い方の整理が求められている。そこで今回、目的や対象データに沿って両者のより良い使い方、いわゆる「両利きのデータ分析 」について紹介する。

大地震直後に免震建物の健全性を確認するための
「直立型ロングストローク変位計」の開発と適用

曽根 孝行 氏
株式会社 竹中工務店
【共同発表者】山本 雅史 氏、吉澤 睦博 氏
当社は、お客様の資産や生命を守る安全・安心な建物を実現するため、大地震時に建物にはたらく地震力を大幅に低減する「免震建物」に関する最先端の技術を開発している。
最大震度7を記録した2016年熊本地震では、免震建物の免震層の変位が±400mmにも達した。このような大地震の直後に免震層に設置された免震部材の健全性を確認するためには、大きな変位を計測できる変位計を用いて地震時に免震層が変位する様子を詳細に記録しておく必要がある。しかし、コストや設置手間などの問題からその様な変位計が設置された免震建物はほとんどない。
そこで、大地震直後に免震部材の健全性を確認でき、免震性能を適切に維持できる免震建物の普及を目指して、免震建物に適用しやすい変位計を開発した。課題達成のため、技術的課題の分析を行い、従来の変位計とは異なる計測機構を考案した。試作品を製作して動作性やコストを検証した後、部材設計の見直しによる計測精度の向上や記録・通信機能の追加などを行った。その結果、1台で±800mmに及ぶ大きな変位を水平二方向同時に計測でき、従来の変位計の1/2以下のコストで製作可能な「直立型ロングストローク変位計」を製品化した。
本変位計を複数の実建物へ適用した。今後も適用を拡大し、大地震直後に免震部材の健全性を確認できる安全・安心な「免震建物」を広めていく。
B-2会場

マネジメントと組織運営、働き方

「イノベーションを発動させる経営の質と価値創造の「場」をつくる "Nexus Commons"-創造的「絆 (きずな) 」をつくる創生の場」

前田 明洋 氏
株式会社オカムラ
グローバル社会の中、アジア諸外国産業が製造技術において、かつて世界を席巻した日本製品を凌駕する高品質・低価格製品を産み出しています。これに追従しようとしても、コモディティ化した製品は激しい価格競争の「赤い海」の中で溺れていく運命に陥ります。この新たな局面の経済環境で、更なる発展を遂げるにはイノベーションの発動が不可欠です。しかし、昨今の日本社会では革新的な価値創造が、なかなか進んでいないようです。我々の研究チームは、その課題に取組み、イノベーションを発動させるには、従来とは大きく異なる組織形態と、それを紡ぐための場とツールが必要なことが判りました。その成果を共有させて頂きたいと思います。

イノベーションを発動させる経営の質と価値創造の「場」をつくる "Nexus Commons"-協創のプロセスをマネジメントする方程式

栗本 英和 氏
国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学
名古屋大学教養教育院は、学術憲章で表明した論理的思考力と想像力に富んだ勇気ある知識人を育成するため、協働による協創プロセスを通して、気づきを興し、価値創造に繋ながる大学院生向けの教育プログラムを開発した。現在、統率でないLeadership、管理でないManagement、異質を活かすTeam Building、採りたくなる魅力を磨くEmployability、さらに社会で望ましい個人や組織の行動を目指すSocial Responsibility を提供している。本事例はその1つであるイノベーション発動型Workshopにおける、協創プロセスのモデリングとセンシングに基づく指標と解析事例を示す。

日本品質奨励賞 受賞企業講演

TQM奨励賞
日電精密工業株式会社

専門チーム生産性アップに向けての業務革新

馬場 貴章 氏
株式会社アイシン
弊社は、自動車部品メーカとして、経営理念「”移動”に感動を、未来に笑顔を。」
を掲げている。私が所属する設備工機部は、生産工場における設備の内製業務を担当しているが、必要な専門スキルが深く幅広いので、チームで業務を共有することは難しく、属人化リスクや生産性の頭打ちが問題であった。チームMtgは、形式的な進捗フォローとなり、個人で仕事を回す状態であった。
本事例は、チーム生産性アップの第1ステップは、心理的安全性の確保がキモだと位置づけている。その試みとして、「ビジョン共有」「ノウハウ共有」「毎日Mtg」を実施することで、チームメンバーの意識や姿勢がどう変わっていったか、その取組みのリアリティを紹介したい。

メンバー全員が成果を出せる職場づくり

尾崎 雪夫 氏
株式会社アイシン
グループ経営方針の一つである「安全・コンプライアンスの最優先と品質至上の徹底」、および社員ひとり一人が守るべき価値観・行動基準としてのアイシンウェイを受け、当部は、品質機能部門として「お客様第一」お実践出来る人づくり・職場づくりを重点に取り組んでおり、これに向けては、メンバー全員が働きがいを持って真の改善に取り組むことが、非常に重要と考えている。しかしながら、方針、ウェイを自分事として捉えられない、階層・年代間の教育格差、素直なコミュニケーション不足などの課題があった。このため、マネジメントによる様々な取り組みで、全員の働きがいを向上させ真の改善意識向上につながる好循環で品質機能の強化をめざした。
本事例は、この活動の結果、毎年実施する全社員の意識調査アンケートで、マネジメントスコアを大きく向上させ、全社トップクラスの働きがいスコアを実現させた取組みを紹介するものである。
C会場

新商品開発・技術開発、SQCの活用、その他

レビュー支援システムを用いた改修起因障害の低減

武井 良太 氏
株式会社日立製作所
長期間稼動するインフラ系システムでは、顧客からの質問や障害対応に関する保守運用データが蓄積されている。一方で人員の入れ替わりによりシステムに関するノウハウが減少傾向にあるため、知見が必要なレビューでは影響度確認等の精度が落ちるリスクが生じている。
そこで、レビュアのノウハウ不足を補うために、自然言語処理を用いて保守運用データから知見を導出するレビュー支援システム(QA Assist)を構築した。QA Assistは改修内容を入力すると過去の障害案件を出力し、類似障害事例として参照することでノウハウ不足を起因とする障害を未然に防止する。本発表では、利用事例及び導入効果と今後計画している取り組みを紹介する。

スタータモータ耐久試験設備の異常検知の自動化

関口 強 氏
澤藤電機株式会社
澤藤電機株式会社は、自動車用電装品、汎用発電機、ポータブル冷蔵庫の開発から製造、販売まで行っているメーカーです。
中でも電装品の一つであるエンジンを始動するためのスタータモータは、トラックの燃費向上に貢献すべく、エンジンを繰り返し始動する耐久性が要求されます。
今回の発表は、このスタータモータの耐久性を確認する試験を取り上げたものです。
各部の寿命把握のためには、試験品が壊れる前に予兆を検知して試験装置を停止させる必要があり、これまでは人が始動時の電流波形変化の特徴を確認していました。
そこで、代わりに設備に故障前の予兆を自動判定させ停止するため、MT法で電流波形を解析し、正常と異常を判断する適切なMD値(マハラノビス距離)の導出に取り組みました。
結果として、故障前に設備で自動停止することが可能となり、更に、スタータモータとエンジンの組合せが変わっても使える手法が確立でき、ロス低減・業務効率向上につなげた事例です。

SQC手法を活用したシート用リクライナーのガタつき低減事例

-最適条件の導出によるガタつき量の工程能力向上-

加藤 上太郎 氏
トヨタ紡織株式会社
当社は、主力製品として自動車用シートを生産しています。
その中の、シートのリクライニング機能を担う統合リクライナーという製品は、グローバルでの競争力を高めるため、シートバック(シートの背もたれ)のガタ付きの性能要求値が既存のリクライナーの規格の半分となっています。
そのため、ガタつき防止性能を向上させる新工法であるガタ詰め工程を開発しました。
ガタ詰め工程の工程能力向上を目的とし、SQC手法の一つであるパラメーター設計を用いて、製品の持つ公差を誤差因子、工程の条件を制御因子としたときの、ロバスト性の高い最適生産条件を、工程を設計する生産準備前の段階で特定できた活動事例となります。

開発のやり直し撲滅に向けたHIP性能予測手法の見直し

村田 峰崇 氏
トヨタ紡織株式会社
弊社は内装システムサプライヤーとして内装品全般の開発・製造を行っており、安全に関する性能評価も実施しております。
その中の一つである頭部衝撃保護試験(以下、HIP)は北米法規で定められた安全性能の一つで車両衝突時の頭部への傷害値を算出し一定値以下にする事が法規で求められています。
図面段階でのHIP性能の予測には主にCAE(=Computer Aided Engineering)解析を用いていますが、CAE解析と実機試験の誤差により製品評価段階で目標の未達による、開発のやり直しが発生しています。
今回は統計的手法・SQC手法(重回帰分析)を用いてCAE解析と実機試験の誤差を補完する補正式を導出しCAE結果の新たな判断基準の作成に取り組んだ事例を報告します。

FFAF切断不良撲滅

杉浦 礼記 氏
トヨタ紡織株式会社
弊社の刈谷工場は、主に自動車用吸気系部品を生産しています。その主力製品であるエアフィルターのFFAF(Full Fabric Air Filter)生産工程では、立上げ当初から慢性的な工程内不良があり、特に製品外形寸法を整形する外周切断工程にてFFAF切断不良が発生していました。
本活動では、FFAF切断不良撲滅をテーマに、現地現物を何度も繰り返し、その原因が金型の部品磨耗である事を特定しました。
その対策として、部品仕様の変更及び応答曲面解析を用いた最適製造条件の導出を行い、不良撲滅を目指した活動事例を報告します。
D会場

工程の品質改善・効率化、サービスの質向上、マネジメントと組織運営

マネジメントシステム(QMS・EMS・OHSMS)監査の改革
~経営に貢献する監査とは

菅井 正澄 氏
前田建設工業株式会社
【共同発表者】新倉 健一 氏
ISO・JIS規格にもとづくマネジメントシステムの要求事項の一つに「内部監査」があります。当社では、長年にわたり、規格の認証維持を主目的として、規格要求事項の逐条型監査を実施していましたが、2020年度から経営への貢献を前面に打ち出し、リスクベースの重点指向で監査項目を絞り込み、プロセスアプローチを本格導入して問題の所在を深掘りする方式に改めた結果、指摘件数が大幅に増加し、改善の機会を創出することができました。また、内部監査部門との連携を進め、ディフェンスラインを強化しました。本フォーラムでは、上述の改革の要諦を発表します。

品質経営のフロンティアとなる“サービスエクセレンス”と“生産革新”

小原 好一 氏
前田建設工業株式会社
第二次大戦後の日本は、モノづくりの品質管理に統計的手法を導入し、高度成長に大きく貢献した。他方、サービス業への展開も指向したが、製造業に比べて普及は道半ばとなっている。しかし、IoT、AIなどの普及により大量のデータを収集し、瞬時に分析できるようになったことから、サービスの品質管理に加えて、生産革新も飛躍的に進展する好機が今まさに到来している。本フォーラムでは、その要諦について、(一社)日本品質管理学会 サービスエクセレンス/生産革新部会から得た情報をもとに詳説する。

新たな価値創造としてのサービスエクセレンス

水流 聡子 氏
東京大学
「サービスエクセレンス」とは、卓越した顧客体験をもたらす優れたサービスを提供し続けることができる組織能力である。組織が「サービスエクレセンス」を獲得することで、エクセレントサービスの設計活動が展開され、ポジティブな感情を伴う顧客体験の提供がなされ、顧客満足を超える「デライト≒喜び・感動)」を顧客が感じる。この感情は顧客に組織への信頼を抱かせ、リピーター・推奨者として新たな価値創造と利益を組織にもたらす。
本フォーラムでは、上記の要諦について、(一社)日本品質管理学会 サービスQ計画研究会などから得た情報をもとに詳説する。

サービスエクセレンスと生産革新をドリブンする
3つの“X”(DX・UX・CX)

浅羽 登志也 氏
株式会社IIJイノベーションインスティテュート
サービスエクセレンスと生産革新を実現するために不可欠なインターネット革命とDX(Digital Transformation)の本質に触れるとともに、DXを主導するプラットフォーマーが目指すUX(User Experience)戦略、およびDXに伴うCX(Corporate Transformation)について、(一社)日本品質管理学会 サービスエクセレンス/生産革新部会などから得た情報をもとに詳説する。