企業価値向上経営懇話会(旧:品質経営懇話会)

開催実績

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第14回会合

~「企業の存在価値最大化を目指す品質経営行動」について、2社の事例発表が行われる~

1.第14回開催概要

第14回会合は、2022年6月2日(木)に現地(大磯プリンスホテル)とオンラインでの同時開催として実施した。
今回は、第109回品質管理シンポジウム(2019年12月)にて発出した「大磯令和宣言」を受けて、日科技連「品質経営研究会」(委員長:佐々木眞一日科技連理事長)で検討を進めている「企業の存在価値最大化を目指す品質経営行動」にもとづく2社の事例発表とそれを受けた質疑応答を中心に議論を進めていった。

2.新メンバー自己紹介

冒頭に今回から新たに本会のメンバーとなった以下の方から自己紹介が行れた。
  • 井上 隆 氏(一般社団法人日本経済団体連合会 専務理事)
  • 出口 好希 氏(積水化学工業株式会社 執行役員 生産基盤強化センター所長)
  • 小川 立夫 氏(パナソニックホールディングス株式会社 執行役員)
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3.「企業の存在価値最大化を目指す品質経営行動」の2社事例発表とディスカッション

1) 「企業の存在価値最大化を目指す品質経営行動」の説明

冒頭、佐々木副委員長から、「企業の存在価値最大化を目指す品質経営行動」の説明を行った。この品質経営行動はサブタイトルとして「価値変化に追従できる品質経営行動の研究」とある通り、本会でも複数回議論して考え方には賛同を得てきたものだが、今後具体化に向け以下の検討が不可欠と位置づけている。(以下、図2点を参照)

1)実際の企業活動としてどんな組織で何をアウトプットとして経営判断に結び付けているか、を示す
2)それを一般解に落とし込み、どのような手順で行動するか、を提示する

(2) 事例1:前田建設工業における企業価値向上への取り組み

「品質経営行動プロセス」に照らし合わせた企業の事例として、前田建設工業・顧問の小原氏より、同社が創業以来、コア事業としてきた建築・土木を近年事業を拡大し、かつ高収益である「インフラ運営」にフォーカスして「品質経営行動プロセス」の取り組みについて紹介があった。

新しい事業に対するチャレンジを組織全体で取り組む、そのビジョンをしっかり描く、それから先行している海外企業に学ぶ、そのような企業をむしろパートナーとして取り込み、自分たちの実力を高めていくことつけてこういう姿勢が、今後この新しいコンセッション事業を前田建設としてビジネスの中心に持ってこうという時に必要な経営姿勢である、という答えだったかと思う。

(3) 事例2:安川電機における価値創出プロセス

2社目の事例として、安川電機 小笠原社長から取り組みのご紹介があった。
「品質経営行動プロセス」で明示した下記①~⑥の行動に対して、同社の掲げる「2025年ビジョン」実現に向けた価値創造プロセスも提示しながら、組織としての具体的な取組を具体的にわかりやすくご説明をいただいた。
  1. ① 経営環境の変化を収集・分析する
  2. ② 組織としての実力・強みを分析・把握する
  3. ③ 組織として取組む領域を決定する
  4. ④ 組織として提供する価値を意思決定をする
  5. ⑤ 組織としての事業計画を作成する
  6. ⑥提供した価値を評価し、意思決定者へフィードバックする
また、基本戦略の中で「顧客を勝たせる」ことを意識し、ビジネスモデルが考えられてること、また最後の価値創造プロセスのインプット・アウトプットが、正に「品質経営行動」の見本のような内容であった。

4.「品質経営研究会」の検討内容の報告について

日科技連「品質経営研究会」のメンバーであるトヨタ自動車・鈴木浩佳氏から、以下の通り報告があった。
【1】品質経営研究会の活動目的・目標
【2】検討ステップ
【3】これまでの取り組み内容
【4】コト価値創造組織能力とTQM活動要素の対応整理
【5】コト価値創造組織能力獲得にむけたTQM活用方法の検討
【6】2022年度活動内容
【7】まとめ
コト価値創造のためのストーリー、そのストーリーに対応して必要な組織能力(16項目)について検討内容の報告があった。また、この組織能力を獲得・強化していくためにTQM活動要素(トップのリーダーシップ、方針管理等の9項目)をどう使っていくのかをマトリクスを作成し、検討を進めている。
さらに、この対応整理表を5つの主要課題を抜き出し、重点を置きながら議論を行っているとの説明があり、懇話会メンバーからは、コト価値創造を実現するための組織能力獲得に向けたTQM活用方法の検討は極めて的を射ており、今後の研究成果に期待したい旨のコメントがあった。
戦後間もない頃からTQCとして日本の産業界の競争力を高めてきたこの素晴らしい活動、財産を、激変する価値観(モノの価値からコトの価値へ)の中でも役立てていかなければならず、そのための手段が今回の取り組みである。

5.まとめ

坂根委員長から、以下のまとめがあった。
  • 今回、企業価値向上経営とは具体的にどういう行動することが必要なのか、という観点で前田建設工業、安川電機の具体的かつ革新的な取り組みをご紹介いただいた。
  • コマツで取り組んだ土木設計現場のいわゆるDX化は「見える化」をつなげて「スマートコンストラクション」として日々進化を続けている。
  • 単なるデジタル化といえば、サイバー空間において色々な仮想現実を実現しいく部分についてはGAFAのようなところが大いに先行し、日本では少し立ち遅れてしまっているが、日本の強みである強い現場をベースにした情報のデジタル化、これは日本に残された非常に大きな強みであり、ビジネスモデルで先行するということに対して研究の余地はあるものの、大いに自信を持って進めていってもらいたい。
(報告・まとめ:品質経営創造センター 安隨 正巳)