改訂版エグゼクティブセミナー
顧客価値創造・組織能力
獲得・向上セミナー

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JUSE-エグゼクティブセミナー

「JUSE-エグゼクティブセミナー」 OB訪問インタビュー 

コマツ
執行役員 生産本部茨城工場長
櫻井 直之氏に聞く

第2期(2020年度)JUSE-エグゼクティブセミナー 参加

エグゼクティブセミナーは、戦略をTQMに落とし込み、
実現のための組織能力作りや具体的活動まで検討できた。
この点が一番よかったですね。

コマツ

●代表者 代表取締役社長(兼)CEO 小川 啓之 ●設立:1921年5月13日●売上高:2兆1,895億円(連結:2020年度実績) ●従業員数:連結 61,564名 ●事業内容:建設・鉱山機械、ユーティリティ(小型機械)、林業機械、産業機械などの事業を展開
https://www.komatsu.jp/ja
1.戦略を“絵に描いた餅”にしないためにTQMに落とし込む

聞き手

:櫻井様にご参加いただいた第2期エグゼクティブセミナー終了から約1年が経過しようとしています。今改めて、エグゼクティブセミナーを振り返っていかがでしょうか。

櫻井

:その前に教えてもらいたいのですが、今回のインタビューに私を選んだ理由は何でしょうか?

聞き手

:櫻井様にお願いした理由は2つあります。あくまでも私の主観によるものですが、1つ目の理由は、セミナー中参加者10名の中でよい意味で最も率直にご発言をされていたこと、2つ目は、エグゼクティブセミナーの1月目と最終月で大きく変化されている印象を持ったことからです。したがって、本日も一切忖度のないお話を期待しております(笑)。

櫻井

:わかりました(笑)。たしかにそういった部分はあったかもしれません。趣旨を理解しました。

聞き手

:では、改めてお伺いします。セミナーはいかがでしたでしょうか。

櫻井

:私は、ブラジルの海外現地法人に赴任していた際MBAを取得しました。また日本でもマネージメントスクールに通ったことがあり、そこでは戦略立案やビジネスモデルの構築方法などを学びました。但し、その戦略の実現方法は各自で考える、というものでした。
本セミナーでは戦略をTQMに落とし込み、実現のための組織能力作りや具体的活動まで検討できました。この点が一番よかったですね。

聞き手

:戦略を“絵に描いた餅”にしないという。

櫻井

:多くのビジネススクールでは、前半部分(事業構想部分)は学びますが、それを組織に落とし込んで、実現するためのプロセスまでは行かないんですよね。きちんと、“組織づくり”まで繋げて取り上げているセミナーは初めての経験でした。

聞き手

:本セミナーでは、実現のためのノウハウのキーは、TQMと位置付けています。

櫻井

:当社では若い頃から、TQMを叩き込まれます(笑) 。だから最初は、「えっ!TQMのセミナーにいくの?」と感じていましたが、セミナーを進めていくうちに腹落ちできた気がします。

聞き手

:具体的に、どのあたりが腹落ちできたのでしょうか?

櫻井

:組織づくりの一つとして、人材育成や、外部パートナーとの連携がありました。例えば、IoTを活用したダンプトラックによる顧客価値創造を実現しようとする時、自社だけでは対応しきれない部分が出てきます。そういった時に、自社の保有シーズと外部パートナーとの連携をどのように組み合わせて進めていくか、ということにTQMが役に立ちます。このあたりを1つのセミナーの中で検討できる、ということはなかなかないと感じました。
2.社内、協力企業、お客様の現場、すべてを大切にする

聞き手

:櫻井様は、茨城工場長に着任されて丸2年と伺いました。それまでのご経歴を教えていただけますでしょうか。

櫻井

:実は、茨城工場に勤務するのは今回が初めてです。途中でブラジルに12年半ほど駐在し、それを挟んでの粟津(工場)勤務がブラジルより少し長い位ですかね。コマツは、各工場の生い立ちや製品がそれぞれ異なっているのですが、大型ダンプトラックを扱う茨城工場は、お客様も製品も今まで経験してきたものと全然違いました。

聞き手

:文化や風土も異なる部分があるということですね。その中でどのようなマネジメントを心がけておられるのでしょうか。

櫻井

:私が着任してから、新型コロナウイルスが猛威をふるい続けており、茨城工場のメンバーとコミュニケーションが取りづらい部分があります。マスクを着けているので、顔の下半分を見れてない人もいます(笑)工場長としては、そこが一番苦労した部分であり、マネジメント上の工夫も必要であった点かもしれません。

聞き手

:なかなか交流が持ちづらい環境下ですよね。ちょっと気軽に一杯、とやりづらいです。

櫻井

:工場の部長・課長クラスが参加する会議体は以前と変わらずありますが、現場を含めた職長以上のメンバーは生産本部・調達本部・開発本部あわせて130名程在籍しています。コミュニケーションを円滑にすることを目的に、昼食会なども定期的に開催するようにしています。特に現場のメンバーは、名前と顔と仕事内容を把握しておかないと仕事にならないので、社内にいる時は、必ず現場に足を運ぶようにしています。

聞き手

:現場の重要性を認識されておられるのですね。その中でいわゆる『櫻井流・現場の見方』があればお教えください。

櫻井

:日々の話で言いますと、まずくまなく現場を回り、皆と顔を合わせるようにしています。
もう1つは、「13人衆パトロール」というものをやっていて、私を含めた13人の安全エキスパートの内、毎日誰かが現場をパトロールし、そこで上がった改善提案を月次のハード対策委員会でフォローするようにしています。どちらも、共通した着眼点は「安全」ですね。
あとは、班長による現場改善の発表会が毎月1回あるのですが、私はそれを大変楽しみにしており、発表後には必ず感想をコメントするようにしています。その際は、まずは褒めることを心がけています。

聞き手

:なるほど。現場を重視する櫻井様らしいお話です。

櫻井

:もう一つの私の信念は、協力企業を大切にすることです。現在、茨城工場と一定の取引金額のある企業だけでも100社以上あるのですが、茨城工場着任後ほぼ全ての企業を訪問しています。併せてお客様の現場も重要です。お客様の現場に実際に足を運ばないと見えてこない問題もありますし、口では言っていても実感が出来ない部分もあります。
一般論として現場の労働力不足の話をよく聞きますが、現場を見て肌感覚でわかっている人は意外に少ないのではないでしょうか。従って、企業訪問時には若手を一緒に連れて行き、肌感覚を養うことも心掛けています。
3.課題を具体的な活動に落とし込むため「事業構想基本フレーム」はドンピシャ

聞き手

:そのあたりは、今回のエグゼクティブセミナーの「自社研究」に取り入れられたのでしょうか。

櫻井

:はい。取り上げました。受講当時もその部分にはとても危機感を持っており、実際に危機感を持っていたテーマとして検討を進めることが出来たのは、現在の業務にとても役に立っています。

聞き手

:まさに、直面している課題をテーマに検討を進められた、ということですね。

櫻井

:コマツではお客様のところに行って、お客様の価値を向上させるための活動を進めています。その観点でも、セミナーで学んだ、事業の戦略的ポジショニング、マネタイズシナリオ、組織オペレーション方針、活動システムを使って「事業構想基本フレーム」を作成し、その後、具体的な活動に落とし込むためにTQMを使っていく、というプロセスはまさにドンピシャでした。

聞き手

:「TQMがこんなところにも使えるんだ」という気付きも得られたのでしょうか。

櫻井

:まさにその通りですね。

聞き手

:「事業構想基本フレーム」は、セミナーの中でグループ討論でも体験いただいています。

櫻井

:グループワークで「産直メーカー・ひたちなか市の干し芋」を題材にして進めていったことは面白かったですね。私が所属した班では、皆さん「産直メーカー」とは関係のない方ばかりだったのですが、グループワークを進めるうちに、「産直メーカー」としていかに儲けるか、という話にみんなが夢中になりました(笑)
グループワークでは全然違う分野の事業構想について議論することで、新しいビジネスモデルを考えるための考え方のトレーニングが出来、自社のビジネスをテーマとする個人研究に役立ちました。
4.「随行者制度」を活用して人財育成

聞き手

:それ以外に、何か気づきはありましたでしょうか。

櫻井

:気づきということではないのですが、エグゼクティブセミナーには「随行者制度」というものがありますよね?

聞き手

:はい。あります。追加参加費はなく、参加者と一緒に全プログラムを受講できるシステムです。

櫻井

:私は、30代の若手メンバーを随行者に指名し、一緒に受講してもらいました。彼は、もともと生産技術部門に勤務していたのですが、当時は企画課という部署でお客様の声を伺う業務も担当していたこともあり、人材育成の一環として今回のセミナーの趣旨から彼がふさわしいと考えました。
今では、アメリカの海外現地法人に赴任して活躍をしてくれていますが、とても良い機会になったと思います。
5.コト価値創造におけるTQMへの誤解

聞き手

:先程、TQMの有用性が改めて感じられたとお話しいただきましたが、いわゆる「事業構想からTQMへのつなぎ目」の部分がわかりづらかった、との声をセミナー中に櫻井様から伺った記憶があります。

櫻井

:はい。確かにセミナー受講時は「わかりづらい」と言っていましたね(笑)。セミナー受講時はそう感じたのですが、セミナーを終了し、今一度見直してみた結果、受講していた時よりしっくりきたということなのかもしれません。
ひとつ、この部分で、苦言というかアドバイスをお伝えしてもよろしいでしょうか。

聞き手

:はい。是非お願いします。

櫻井

:前半の事業構想部分は、マネタイズシナリオや活動システム等の手法にしても、先生方の講義にしても、とても新鮮かつ斬新な話で、刺激を受けました。ただ、後半のTQMになった途端、30年以上前に聞いたような話で、正直ガクッときました(笑) もちろんTQMそのものが悪いわけではないのすが、前半部分とのギャップを強く感じた、という感じです。

聞き手

:確かに、前半部分との“ギャップ”といいましょうか、違和感はあったと思います。

櫻井

:ワークを進めるにつれて徐々に理解できましたが、最初は違和感がありました。TQMは概念や手法は既に確立されているものなので、内容自体を変えるというよりは、その“ギャップ”を埋めるようにカリキュラムを刷新すると良いかもしれませんね。

聞き手

:ありがとうございます。今年(第3期)はそういったご意見をもとに、少しカリキュラムを変更しています。よく言われる「コト価値創造におけるTQMへの誤解」についての講義や、ワークシートの全体像についての講義を入れ、参加者アンケートを見る限り、“ギャップ”を少し埋めることは出来たかもしれません。

櫻井

:そうなんですね。そういう講義や説明があると、参加者としては理解が促進されると思います。
6.坂根前社長から学んだQCの真髄

聞き手

:かなり以前から「モノづくりからコトづくりへ」、「顧客価値創造」などと、コト価値へのシフトの重要性が叫ばれています。改めてお聞きしますが、TQMはコトづくりに役立つ経営手法とお考えでしょうか。

櫻井

:新しいビジネスを始めるためには、今までなかった組織を作る必要性が生じたり、関わりのなかった企業をパートナーとして共創していく、などといったことも考えていく必要が出てきます。先程もお話しましたが、TQMはそういったものに役立つ部分があると思います。私自身もそのことを考え、整理するよい機会になりました。

聞き手

:櫻井様は、TQMの素養があったから、より理解が深まった部分もあるのでしょうか。

櫻井

:確かに、それはあるかもしれません。TQMの素養があったからこそ、違和感を持った部分もある一方で、理解が深まったと感じます。手前味噌になってしまいますが、坂根さん(正弘氏、コマツ 元社長)の言う「日本のモノづくりは、ビジネスモデルで先行し、現場力勝負に持ち込めば負けることはない」という言葉は、本当に素晴らしいです。「こうやれば負けないんだよ」と提言してくれる先輩はなかなかいないですからね。

聞き手

:坂根元社長は、エグゼクティブセミナーの学長をお務めいただいています。

櫻井

:実は坂根さんとは、忘れられないエピソードがあるのです。

聞き手

:是非そのエピソードをお聞かせください。

櫻井

:私がブラジルの海外現地法人の社長をしていた時の話です。ある日、当時会長だった坂根さんから電話があったのです。内容は「ブラジルの顧客現場での建設機械の稼働が止まっているが大丈夫か?」といったものでした。
恥ずかしながら、その時点で私は稼働低下について明確に認識ができていなかったためすぐに調べたところ、やはり稼働が落ちていました。そしてそのすぐ後にリーマンショックが起こったのです。

聞き手

:ある意味、リーマンショックを予知した、とも言えるわけですね。

櫻井

:そうなんですよ。当社ではKomtrax(コムトラックス)というシステムで全世界の建設機械の稼働情報を遠隔で確認するのですが、その情報・データで予知されたのだと思います。もちろんブラジルだけを見られていたわけではなく、おそらく全体を見て直感されたのでしょうね。

聞き手

:QCの真髄である「見えないものを見える化する」というところにも通じます。さすがです。
7.エグゼクティブセミナーに参加したら、積極的に発言すべし

聞き手

:エグゼクティブセミナーでは、コロナ禍もあり、セミナー中、他の参加者の方との交流にも制約が出た部分もありましたが、セミナー修了後、やりとりをされている参加者の方はいらっしゃいますでしょうか?

櫻井

:残念ながらないですね…。私自身、本来「異業種間交流」をとても大事にしているのですが、やはり今回は、コロナの影響で実現出来ていないのは本当に残念です。ただ、本セミナーはOB会組織があるようですので、コロナが終息したら、是非OB会を開催してくださいね。

聞き手

:はい。わかりました。

聞き手

:最後に、本セミナーへの参加を検討している方がいたとして、OBとして何かご助言はありますでしょうか。

櫻井

:これは他のOBも仰っていたことなのですが、そうそうたる講師の方々のお話を聴けることはとてもお得です。また、先ほどもお話しした通り、ビジョン・戦略の話だけでなく、“構想”の話から、TQMを使った“実装”への落とし込みについて学べるのは、このセミナーしかないと思います。

聞き手

:お褒めいただき、ありがとうございます。

櫻井

:ただし参加した場合は、グループワークはもちろん発表に対しての質疑の場等でも、積極的に発言した方が良いと思います。社外の人、それも異業種の同じ立場の方と議論をする機会というのは、普段なかなかないので、新しい視点も得られますし、やっぱりよいですよね。

櫻井

:私はセミナーでは積極的に質問をするようにしていました。印象に残っているのは、「最近サービスやコト価値に皆さんの関心がシフトしていますが、製造業以外でのTQMの動向はどうか?」という質問への回答です。

聞き手

:どのような回答だったんでしょうか?

櫻井

:プラットフォーマーやICT系の企業でも、TQMやQCサークル活動を実施している例の説明を聴き、やはり、「TQM」と呼ぶかどうかは別として、組織づくり・人材育成という観点でのTQMの有用性を感じました。

聞き手

:本日は、お忙しいところ貴重な話をお聞かせいただきありがとうございました。
今後のご活躍と貴社の益々の発展をお祈りいたします。

(聞き手:日本科学技術連盟 品質経営創造センター 部長 安隨 正巳 
原稿まとめ:品質経営創造センター 菅田 未優)