聞き手
:廣田執行役にご参加いただいた第1期エグゼクティブセミナー終了から1年が経過しました。今改めて、エグゼクティブセミナーを振り返っていかがでしょうか。廣田
:月日が流れるのはとても速いですね。もう1年経ちますか。セミナーで学んだことは、総じて役に立っていますよ。振り返ると、事業構想とそれを実現するための組織開発・身に着けるべき中核能力を考える、という立て付けが特に良かったです。
聞き手
:そもそも本セミナーに参加いただいたきっかけは、どのようなものであったのでしょうか。廣田
:当時、上司であった執行役(品質本部長)から、「こんなセミナーが日科技連で始まるので、是非参加してみないか」と言われたのが参加のきっかけです。当時は、あまり深く考えず、「事業構想を学ぶセミナーか」程度の理解しかありませんでしたが(笑)。聞き手
:本セミナーは、7か月間という長期セミナーでした。廣田
:セミナーで当初取り組んでいた時は気づかなかったのですが、事業構想を自社で実践していく中で、改めてよい流れなのだと感じました。これは、長期間のセミナーで自身の頭で徹底的に考え抜いたから、時間をかけて理解が出来たのだと思います。セミナー中は、悪戦苦闘の連続でしたが(笑)聞き手
:具体的には、どのあたりが特に“よい流れ”と感じられたのでしょうか。廣田
:エグゼクティブセミナーは、外部適応(事業構想)と内部適応(組織能力の獲得)の、大きく分けると2つのパートから構成されています。事業構想の方は、講師も有名な方ばかりで講義内容もよかったです。また、後半(組織能力の獲得)部分は、前半で構築した事業構想をオーソドックスなTQMを活用して具現化していくプロセスがよいと思いました。「事業開発の全体像」(エグゼクティブセミナー 加藤雄一郎教授の講義資料より)
聞き手
:先程、“悪戦苦闘”と言われましたが、特に苦労された点は?廣田
:前半~後半のつながりの部分で苦労した記憶が残っています。どんなに素晴らしい事業を構想できたとしても、それを実現するための組織能力がセットでないとダメということは理解できたのですが、組織能力に移行する繋ぎ目の部分がスムーズに移行できませんでした。理解が難しかったです。聞き手
:本セミナーは、廣田執行役が言及された後半部分「内部適応」、つまり組織能力獲得に有益なツールであるTQM(総合的品質管理)を活用して実現していくことが特長となっています。廣田様ご自身はTQMに関する実践経験はどれくらいお持ちだったのでしょうか?廣田
:大した経験はなかったですね(笑)QC7つ道具などツール、手法系の知識も充分には持ち合わせていたとは言えませんでした。
聞き手
:私も第1期セミナーに全期間出席していましたが、グループ研究でもリーダー役を務められ、そんんな感じはしませんでしたが…。廣田
:はい。セミナーを受講するにあたり、知識レベルでの支障はなかったです。コニカミノルタにはDR(デザインレビュー)のシステムがあるのですが、このプロセスが何のためにあるのか、ということが講義や演習を通じて徐々に理解できるようになり、今までの経験してきた知識とつながってきたようにも思います。聞き手
:セミナーでは、方針管理や日常管理、機能別管理の講義も実施されました。廣田
:方針管理の有用性はわかっていましたし、日常の業務でも長年使用してきました。ただ、方針管理がTQMから来ていると知らなかったので、このセミナーで改めて、ストラクチャーとして理解できました。聞き手
:エグゼクティブセミナーの中で、一番有益だったのはどの部分でしたでしょうか?廣田
:ツールとして特に感心したのは、「活動システム」ですね。活動システムは、初めて見るものでした。新しい事業を始める際、事業構想で計画しておくべき内容が足りてないのでは?と社内で常々感じていたのですが、活動システムがあると、検討した事業計画に穴が無いか、スムーズな実施に移せるのか、という点を確認するために非常に有用と感じました。事業構想をチェックするためのツールとしても、非常に良いし必要不可欠なものですね。
聞き手
:その他には、役立ったものはありましたでしょうか。廣田
:それぞれの考え方や手法は、断片的には使用してきました。また、社外の研修などで学んだこともありました。繰り返しになりますが、本コースではそれを「体系的に」学べた点が特によかったですね。聞き手
:廣田執行役は、本セミナー修了後、習得された内容を貴社内において、2020年5月からBM(ブランドマネジメント)活動と称し、組織横断的な取り組みの旗振り役をお務めであるとお聞きしました。廣田
:はい。その通りです。事業企画をフレームワークとして実践的に学ぶことを目的に、2020年度に立ち上げ一年目の活動を終えました。これは、社内の実テーマを題材に、真の“モノづくり、コトづくり”への実現を目指したものです。
聞き手
:貴社のBM活動のフレームワークは、どのようなものなのでしょうか。廣田
:地に足の着いた事業構想を行なうためには、事業構想フレームワークが重要であり、活動システムも活用してみたいと考え、社内での活動をスタートしたのですが、当社のBM活動のフレームワークを大きく言うと、「顧客価値を特定 ⇒ デザイン思考 ⇒ マネタイズシナリオ ⇒ 組織活動システム ⇒ 事業企画化(≠ビジネスアイデアの企画)」となります。聞き手
:なるほど。それを具体的な社内テーマで実践されているわけですね?廣田
:はい。そうです。2020年度は社内の6つのテーマ(事業)を題材として、事業企画の再構築をしました。具体的な実施事項は以下の通りです。- 想定顧客のスクリプト分析
未来の顧客とその顧客価値を特定 と コニカミノルタの役割・⽴ち位置の明確化 - 顧客に向けたソリューションの具体化
- 顧客の成⻑プロセスの定義
- 事業規模の算出(マネタイズシナリオの作成)
- 活動システムの検討
- 事業企画の再構築案
聞き手
:早速に全社的な展開とは驚かされます。すごい行動力ですね。一年間実施したBM活動に対し、参加者あるいは役員層の皆様の反応はいかがでしたでしょうか。廣田
:情報機器関連の役員層は、最初は「んっ…」というような訝しんでいた感じがありましたが、やっているうちに納得感が徐々に芽生えてきた印象を受けました。最終報告の際には、BM活動でやりたかったことを理解してもらえたと思います。ただ、全体でみれば、例えば長らく企画部門にいたメンバーなどは、型にはめられることへの違和感の部分もあるようで、このあたりが今後の課題と捉えています。
聞き手
:会社全体の理解を短期間で得るのは難しいのかもしれませんね…。廣田
:各チームの事業構想の内容が良いか悪いかは別として、そこから見える企業課題については、納得・共感してもらえた部分はあったと感じています。当初、事業構想のプロセスとしての“型”が必要だと思っていましたが、そうではなく、それぞれの事業の戦略(我々はこう進めたいというような)が、このBM活動の中で立てられるようになることも目指しています。
次年度は、最初にビジネスプランありきではなく、もう少し広く事業構想から入り、活動の進化をしていきたいと考えています。
聞き手
:セミナーには12名の受講者が参加されていました。参加者同士の横のつながりという意味ではいかがでしょうか。廣田
:同じグループであったこともあり、小売業からの参加者と結構話をしましたね。全くの異業種だけに刺激がありました。セミナー終了後も、ビジネス上の話も一緒に検討したりしてもいましたよ。聞き手
:なるほど。そういったところがエグゼクティブセミナーの良い点なのでしょうね。廣田
:そうですね。7か月という長期間、2回の合宿も含め、一緒に過ごすわけですので、一体感は自然と芽生えますね。OB会がコロナウイルスの関係で実施できていませんが、是非開催してもらえると嬉しいです。聞き手
:はい。日科技連としても実施したい気は強いですが、コロナウイルスの終息を待ちたいと思います。聞き手
:これからエグゼクティブセミナーに参加しようと思っている方へ、一言お願いします。廣田
:参加を検討しているなら、参加をお勧めします。事業構想の体験により、自社が将来どの部分を伸ばす必要があるのか、何を変えなくてはいけないのか、ということを明確に方針に入れ込んでいくことが可能となります。
私は、この“思考の流れ”が重要だと考えており、それを一年間通じて様々な講師から学ぶことが出来るので参加して損はないと思いますよ。
聞き手
:大変うれしいコメント、ありがとうございます。廣田
:講師陣も充実しており、かなりの豪華メンバーです。これで役に立たないわけがないですよ。クオリティが高いし、手を抜いていないことを感じます。特に、コマツの藤原執行役員の講演(コマツにおけるブランドマネジメント活動)には感動すら受けました。コマツの凄さは、こういう人がいるところなのだと感じました。
また、遠藤功先生(㈱シナ・コーポレーション)の講演(グローバル競争を勝ち抜く 現場力と日本品質)もよかったですね。ずば抜けたとんでもないことではなく、どの会社でもぶち当たる課題から話を展開しているところがよかった。『勝てる人財と組織の創り方』を教えてくれた気がしています。
聞き手
:本日は、お忙しいところ貴重な話をお聞かせいただきありがとうございました。今後のご活躍と貴社の益々の発展をお祈りいたします。
廣田執行役と聞き手の日科技連・安隨正巳
(聞き手:日本科学技術連盟 品質経営創造センター 部長 安隨 正巳
原稿まとめ:品質経営創造センター 菅田 未優)
原稿まとめ:品質経営創造センター 菅田 未優)