日刊工業新聞連載記事
顧客価値創造と現場力(4)片付けるべき顧客のジョブに応える
■行為ニーズのデザインが重要■
顧客には片付けたいジョブ(用事や仕事)がある。そのジョブを片付けるために、顧客は何らかの製品を“雇用”する。ジョブの片づけ方に不満があれば、その製品を“解雇”し、別の何かを雇用する。大事なのは、顧客のプログレス(進歩)であって、製品ではない。
破壊的イノベーションで有名なC・クリステンセンの「ジョブ理論」は、企業は製品を売ることから、顧客のジョブに応えることにシフトすべきだと説いている。
今日の価値創造観の源流をたどると、サービス・ドミナント・ロジック(SDL)に行き着く。“製品そのものに価値はなく、価値は製品の使用を通じて初めて生まれる”という主張は、「製品によって顧客ができるようになることを創り出す」という今日の製品開発観に結びついている。
未充足ニーズ理論の深層構造モデルに照らし合わせて深堀しよう。
顧客ニーズの深層には普遍的な「存在ニーズ(be)」があり、それを満たすために「行為ニーズ(do)」が発生する。そして、その実現手段としての道具が欲しいという「haveニーズ」が発生する。このように各層は“目的?手段”の関係でつながっている。
第2回で取り上げたPanasonic Beautyの場合、忙しいけど、美しくあり続けたい(beニーズ)→特別な手間をかけることなく、時間を上手に使って美容ケアしたい(doニーズ)→寝ている間に肌を潤すナイト・スチーマーが欲しい(haveニーズ)となる。
「私たちがデザインすべきは、名詞ではなく、動詞だ。『電話』というモノをデザインするのではなく、『電話をかける』という行為をデザインするのだ」という、デザイン思考を世界に広めた米IDEOの主張は、三層から構成される顧客ニーズ構造のうち、新たなDoニーズを創造することの重要性を示唆している。